『どろろ』は、手塚治虫の漫画『どろろ』を原作とした日本のテレビアニメ。パイロットフィルムを含め、2019年までに3度にわたって制作されている。
1968年1月12日、虫プロダクションが『どろろ』の題でカラーのパイロットフィルムを制作した。絵のタッチは原作に近いものとなっている。
1969年4月6日から9月28日まで、フジテレビ系列で毎週日曜19:30 - 20:00 (JST) に全26話が放送された。虫プロダクションとフジテレビの共同制作。タイトルは、当初は原作と同じく『どろろ』であったが、1969年7月6日放送分(第14話)より『どろろと百鬼丸』へと改題された。
総監督を務めた杉井ギサブローは当時、独立プロダクションのスタジオ「アートフレッシュ」を主宰しており、そこに文芸として所属していた出崎哲が面白いと持ったきた原作版『どろろ』のアニメ化を虫プロに提案したところ企画が通り、音楽を冨田勲に依頼したうえ、杉井の絵コンテを元にアートフレッシュがグロス請けで作画を行ってパイロットフィルムの制作を行い、1968年1月29日に完成した[1]。
冨田による同作品の音楽背景も、前もって必要な楽曲を溜め録り録音しておく方式が採用され、曲調も基本的に少人数のオーケストラに琵琶や鼓などの和楽器を加えた編成で、必要に応じて電気的に変調させた西洋楽器の響きと男声合唱が加えられており[2]、冨田が「男声コーラスで魔物が迫ってくる感じを、琵琶の音で百鬼丸が呪いを打ち破る感じを表現した」と語る曲となった[3]。
ところが、アートフレッシュは全員で仕事を空け、どろろ体制にしたにもかかわらず、放送予定が延びたと富岡厚司から告げられた。スタジオを持っていて金が無いのは困るからと相談したが、虫プロもきつくて何ともならないと返答された。そこで、東映時代の先輩でAプロダクションの楠部大吉郎に金を貸してほしいと泣きつき、借りることには成功するが、引き換えに『どろろ』が動き出すまでの間、メンバーはAプロを通じて『巨人の星』の作画下請けをする条件を呑む[1]。しかし『巨人の星』は気が進まなかった杉井はその状態を逃れようと、『ルパン三世』の企画をAプロに持ち込み、『ルパン』のパイロットを準備している最中、カルピスが『どろろ』のスポンサーに決まる。
1968年4月から8月くらいまでの頃には制作が本格的に始まるが、第1話完成は同年10月2日、放送開始は1969年4月6日と半年間のブランクがあり、DVD-BOX封入解説書には、放送予定が延びたのではと記されている[1]。
1969年当時、すでに大半のテレビアニメがカラーで制作されていたにもかかわらず、同作品はモノクロ作品となっている。これは、カラーのパイロットフィルムを観たスポンサーから「夕食時に血が画面にバーっというのは生々しすぎて気持ちが悪いでしょう」とクレームがついたのに対し、杉井が、子供は大人の横から大人のドラマを見たりするものだから、この番組は思いきって子供たちに背伸びさせてみたいと思い、だからカラーでやる必要はないんじゃないかとも思ったことで「わかった、モノクロで作ればいいでしょう」と、モノクロ制作をむしろ喜んで提案したことで実現した[4][1]。社会性を見せていこうとした意図が感じられる原作だったことから、アニメも少し大人っぽい視点で通していかないとつまらないと、木版でタイトルを彫らせたり、主題歌ではなく渋いコーラス曲のテーマ曲になった[1]。
美術監督の槻間八郎も、京都・奈良で建造物の年代を調べ、神社仏閣、屏風図などの古い資料を詳細に撮影し、1964年に公開され室町時代を扱った東宝作品の映画『がらくた』や『七人の侍』のフィルム資料を東宝から借りて制作に臨んだ。美術背景のタッチは時代劇の重量感とリアル性を出してくれという杉井の要望を受け、墨流し、はがし、フノリの上からブラシをかけるなど、試行錯誤を重ね描きあげた[5]。アニメの百鬼丸は、緊迫感を出すため北野英明の手により原作よりも大人っぽいデザインにアレンジされたが、『少年サンデー』版の原作にいなかったノタは、原作が暗いことを描いていて気にしていた手塚の、アニメは明るくしてほしいとの要望に応え、アイドルキャラで狂言回し的な意図で登場させた[1]。
ハードな世界観の内容だったが、視聴率的に思わしくなかったため、スポンサーとテレビ局から路線変更の要求が出された結果、第14話以降は前述の通りタイトルも改変され、低年齢層を意識した内容へと路線変更される[6][7]。1クール作り終えたころ、杉井は手塚に呼び出され、「どろろを何とかギャグ物にできないか」と相談された。「僕なりに、原作ならこうなるであろうと想定して作ってきたんです。いきなりギャグ物になんて出来ません。」と返答したところ、手塚から「じゃあ、百鬼丸の最後はどうなるんですか」と問われ、「自分の体を取り戻したとき生きる目的を失うわけですから、当然坊主になって放浪ですよね」と返答したため、「そんな難しい話、子供が見ますか」と物別れに終わった。そのため杉井はプロデューサーの柴山達雄に「監督が自分で降りたら事件だから、プロデューサーのお前が俺を降ろせ」と迫るも、降りるのは許されず、杉井は「何がギャグ物だ。勝手にやれ。」とへそを曲げ、現場に行くのをやめてしまう[8]。
柴山は、視聴者対象の年齢を絞るため『どろろ14話以降の新設定と改案』と題した書類を書き、「話をどろろ中心に。百鬼丸は、どろろの援助者として登場。」、「百鬼丸の背負っている宿命的、運命的なものは全て省略する。妖怪を倒せば体が戻るということは、パターンとしてのみ。」、「犬の活躍を前面に押し出す」、「ギャグをふんだんに入れ、全体を明るく軽快なものにする」、「出てくる妖怪も、怨霊とか執念の産物のような抽象的なものを避け、ズバリそのもの妖怪を出す」と対応策を提示した[9]。そのため、第13話完成は1969年4月2日だったが、第14話が完成した6月26日までは約3ヵ月間の空白があり、DVD-BOX封入解説書には、まさにスタッフが路線変更作業に忙殺された時間ということになろうかと記されている[7]。
第14話以降はクレジットから杉井の名前がなくなり、「プロデューサーディレクター」という名称で北野が監督を引き継ぐが[8]、実のところ北野は自分の漫画執筆が忙しく、『どろろ』の作業にはほとんど参加しておらず、『どろろ』の原画マンもアシスタントとして連れていった。高橋良輔が、オープニングのコンテでも雑務でも周りに頼める人がいなかったので、やれることは全部引き受けた、と後に語っているように[10]、実際は鈴木良武を中心として高橋や勝井千賀雄などが一緒になってアニメ版の面倒を見ており、その後も鈴木良武は杉井に報告したり相談していた[8]。
2クール目からは、おっちょこちょいで面白いどろろを生かすためユーモラスな妖怪が多くなり、どろろが主体になったため百鬼丸は妖怪退治役でしか使えず書くほうは辛かった、と鈴木良武は後に語っており[6]、「だけど、14話以降も明るい話になりきっているわけじゃないでしょ」と杉井は語っている[8]。また、小説の執筆を担当した辻真先は雑誌『アニメージュ』の取材に対し、「当初は通年放送の予定だったため、倒すべき魔神も48体で考えられていた」と語っている[11]。
提供スポンサーはカルピス(当時:カルピス食品工業)一社。後の『世界名作劇場』へと続く『カルピスまんが劇場』最初の作品であるが、あくまでも同作品は『カルピスまんが劇場』の1作であり、『世界名作劇場』シリーズには含まれていない[注 1]。
後述の2019年版をCS局・時代劇専門チャンネルで放送する際には、1969年版も併せて放送されている[注 2]。
- ノタ
- 百鬼丸やどろろと一緒に旅をする烏帽子をかぶった子犬。百鬼丸がみお達と一緒にいた時からの付き合い。烏帽子は、みおから貰ったもので、みおの手作り。どろろと仲が良い。
- 原作では、『冒険王』の連載版にのみ、アニメから逆輸入される形で、元々みおに飼われていた犬として登場、百鬼丸たちと旅を共にしていた。単行本化の際に、登場シーンはすべてカットされている。
- 2019年版では、烏帽子は被っていないがよく似た子犬が第1話で登場している。
- 新助(しんすけ)
- 景行の配下。ミドロを育てた白髪の武士。景行の命令で、ミドロの子を有無を言わさず庄屋の作左衛門に金10貫で売りつけた。脱走したミドロを連れ戻そうとするが反抗され、刀で斬ろうとしたところに馬の妖怪が宿った空飛ぶ4つの蹄鉄が現れ体を貫かれ絶命した。
- 俵 五呂兵衛(たわら ごろべえ)
- 気ままな旅を続ける巨漢の侍。大らかな性格で飄々としているが、暴れ牛の突進を止め牛を軽々と頭上に持ち上げて投げ飛ばす怪力の持ち主。百鬼丸たちに寄ってきた死霊や妖怪を目の当たりにするまでは、死霊も妖怪も信じない男だった。どろろを暴れ牛から救い3人で無人の村を訪れ、悪霊や骨猫に百鬼丸たちと力を合わせ戦った。
- サヨ
- 家族を亡くし漁村に1人で住む、おてんばで男勝りな娘。海獣ビラビラが海を荒らしまわり手も足も出せなかった村人たちは漁にも行けず、それを見かねた兄は海獣を退治しようと1人挑んだが返り討ちにされ死亡。海獣がますます暴れるようになったのは、兄が余計な事をしたからだと村人から責められ堪り兼ねた母は、神社の鐘と柱を用いて後に『神様の銛』と呼ばれる1本の銛をつくり海獣に挑むが、急に静かだった海は荒れ戻ってこなかった。海獣を鎮めるため村人たちにより、どろろと一緒にサヨは生贄に捧げられるが、百鬼丸の活躍で助かる。
- 市兵衛(いちべえ)
- 人が良く豪放磊落な木こり。どろろを気に入り、人食い大木から百鬼丸を救出する手助けをする。
- 五郎左(ごろうざ)
- 雷火犬の雷に打たれて谷底の川に落ち流され倒れている百鬼丸を見つけ、死人だろうと思い込み所持品を盗もうとした村人。弱って自力で立てない百鬼丸を家に招き養生させた。去年、村で開催された闘犬の祭りで横綱になった犬を飼っており、もっと強くするため闘志の元となる憎しみを植え付けようと、その犬を棒で叩き虐める。
- 彦爺(ひこじい)
- 村の長者。おんぶ地蔵の子守りを、報酬は1日銅銭5枚で3食食べ放題という好条件で募集する。応募するふりをして盗みをはたらこうとしたどろろを村人たちと捕まえ、おんぶ地蔵に縄でくくりつけ強制的に子守りを押し付ける。
- グウ太郎(グウたろう)
- なまけ者で、なにもせず楽に暮らし世の中の役に立てないかと老僧に相談したところ、化け物を封じ込める経文を尻に書かれ、最初に声をかけてきた者を尻にしくよう言われる。その言葉に従い、侍に化けて声をかけてきた妖怪土坊主を尻の下の地中に封印した。それからというもの10年間も同じ場所に座ったまま動かずにいた。百鬼丸のために、どかそうするどろろに眠り薬を盛られ動かされて、経文ごと体を洗われる。その後も土坊主から執拗に狙われ、百鬼丸から土坊主を誘いだす釣り餌として縄で木に吊るされた。
- 徳兵衛(とくべえ)
- 景光の部下から一揆を企んでいる疑いをかけられた村長。実は本当に一揆を起こそうと刀を貯め込んでおり、百鬼丸の力を借りたいと頼むが断られ、百鬼丸からどろろを託される。残りの妖怪を討つための一人旅に百鬼丸が1年間に出ていた間に、どろろや村人たちと共に一揆を起こすが、みな景光に捕まる。帰ってきた百鬼丸が景光を討ち果たしたことで自由の身となり、百鬼丸に去られたどろろに、みんなで住みよい村づくりに精を出そうと励ます。
- 天邪鬼
- 天性のイタズラ好きで人の反対ばかりやる、ひねくれ者の妖怪。リーダーで額に角の生えた『ドキ』、尻尾の生えた『ダキ』、羽の生えた『ブキ』の3体。木像の姿で山門の仁王像に踏みつけられていたが、額に角の生えた天邪鬼がどろろを騙し挑発して仁王像を退かさせることに成功。この天邪鬼が残り2匹を仁王像から解放して3匹で村中にいたずらをしまくった。
- 一口かじりを、ひょんなんことから封印から解放してしまい、成り行き上どろろたちと協力して退治に力を貸す。その後は、百鬼丸からそれぞれ角、尻尾、羽を斬られ、仁王像に踏みつけられる木像の姿に戻った。
- 一口噛り(ひとくちかじり)
- オープニング映像にも登場する。通称・『かじりんこん』。寺の初代住職『法華聖人』が書き残した記録によると、約300年前、いつも小作人から年貢を搾取して、もっともっと金を搾り取ろうと死ぬほどの苦しみを与え、生きながら我が身を金の畜生道に落とした血も涙も無い強欲な名主がおり、その姿は歳とともに悪鬼の顔になって小作人を死ぬまで苦しめ続け、死んだときその墓から現れた、名主の執念の塊から生まれし妖怪。
- 夜な夜な現れては貧しい人の家を襲い身包み剥ぎ取り、人の皮を舐め取り、肉を喰いちぎり、骨までしゃぶり尽くし、生き物を片っ端から喰ってしまうため、法華聖人の法力で寺の敷地にある石の下に封じられていたが、村人たちから追いかけられたどろろと天邪鬼たちがその石を退かせてしまったために、その下にあった穴から復活。「一口かじって皮の味、二口かじって塩の味、三口かじって骨の味」と言いながら現れ、目は光り、伸びる舌で百鬼丸に襲い掛かる。舌を塔の先端に串刺しにされ、目を斬られ、火を点けられた五重の塔の下敷きになって倒された。
- 倒すと百鬼丸に声帯が戻った。
- 骨猫(ほねねこ)
- オープニング映像にも登場する。巨大な猫の骸骨に、動くマタタビの木が一体化した妖怪で、自在に動く枝で絡みつき襲い来る。死霊が宿ったカラスや野良猫の大群をけしかけて百鬼丸たちを威嚇。百鬼丸たちが寝床にしていた家を潰し、避難していた家の天井に穴を開け襲い掛かる。百鬼丸が目に突き刺した刀に絡み付けておいた夜光塗料を塗った糸をたどられ、反撃するが百鬼丸に斬り落とされた頭を五呂兵衛から杖で砕かれ絶命。
- 倒すと百鬼丸に両耳が戻った。
- 海獣ビラビラ(かいじゅうビラビラ)
- 別名・『白骨エイ』。2年前に突如現れ海を荒らしたビラビラを、いつの間にか神社のそばに封印したことから地元の人々が『神様の銛』と呼ぶ銛を、好奇心にかられたどろろが地面から引き抜いたせいで復活した、体のいたるところが白骨化したエイの妖怪。どろろが次回予告で「大きさで言えば今までの化け物の中で一番。口を開ければ、あたりの家の2〜3軒は軽く飲み込めるくらい」と評するくらい、かなり大きな妖怪で低いうなり声をあげる。海中だけでなく地中も移動する。妖力でワカメを操り人々を締め付けたりもする。村人により生贄として船で流された村の娘『サヨ』とどろろの2人を喰おうと口を開けたところを、百鬼丸から木の杭を打ち込まれ、神様の銛で目を突かれ絶命。
- 倒すと百鬼丸に歯が戻った。
- 雷火犬(らいかけん)
- 狛犬のような姿に変化する犬の妖怪。怪しい光を放ち、落雷を操り暴風で無数の石つぶてを飛ばす。元は犬同士を戦わせる闘犬が盛んな村で、犬を強くするため戦いで相手への憎しみを発揮するよう村人から常に残酷な手で虐められた犬。心の触れあいや情の繋がりを求めてノタと仲良しになる。牙と落雷で村人を襲うが百鬼丸に両腕の刀で刺され倒される。死の間際に元の姿へ戻り、心配したノタに顔を舐められながら絶命。
- ちなみに、手塚治虫マンガ大全や手塚治虫トレジャーボックスにも掲載されている週刊少年サンデー1968年2・3号のイラスト『特別大画報どろろ百鬼』にも同名の妖怪が描かれているが、姿形はかなり異なっている。
- おんぶら鬼(おんぶらおに)
- けして背中から降りず、背中から生やした4本の腕で絞め殺すと脅して、子守唄を歌わせたり、他の村へ歩かせたりして、おもりをしないと田畑を荒らしたり祟る『おんぶ地蔵』。その正体は小さくなって地蔵の中に潜んでいた巨大な妖怪グモで、子守りで疲れ眠ったところを襲い餌として食っていた。巣だけでも獲物を取れるようになっている巨大な蜘蛛の巣も妖力で張っている。百鬼丸からメッタ斬りにされて絶命。
- 倒すと百鬼丸に背骨が戻った。
- もんもん
- 別名・『モモンガ』。誰もいない寂れた村で『オチイ』という名の女の子に化けていた。その正体は、毛むくじゃらで大きな口をした妖怪モモンガ。黄金のように見える光る石で金に目がくらんだ人々を山に誘い込み、飼っている大ナメクジの餌にしている。高い木から滑空で飛び掛かったり、尖った木の枝を投げて攻撃し、木の枝で変わり身の術を使い攻撃をかわす。どろろが投げた刀で胸を刺され百鬼丸に斬られた。絶命する寸前に「もういいよ」と返事をして大ナメクジをけしかけた。
- 巨大なめくじ(きょだいなめくじ)
- 妖怪もんもんが飼っていた。何匹も生息しており、もんもんが誘い出した者を喰らう。山中の谷にある岩の穴に隠れており低い声で「もういいかい」と声をかけてくる。「もういいよ」の返事で穴から大量に出現する。喰われたら骨も残らない。一見、金に見える光る石は大ナメクジの粘々が石にこびり付いたもの。刀は効かないため、百鬼丸が斬り倒した木々に点けた火で焼き殺された。
- 人食い大木(ひとくいたいぼく)
- 砦を作るのに邪魔だと切り倒されることになった、死霊が憑り付いている樹齢2千年を越えた祟りの木と呼ばれる大木。括り付けられたしめ縄を調子に乗ったどろろが剥がすと幹に顔と無数の腕が出現。刀を突き立てた葉っぱにも顔が浮かぶ。大木の中に人間を飲み込み、口の中に投げ込まれた松明の火を逆に利用して口から火を吹く。切り倒されたり幹が割れても支障なく活動できる。額に炎のような本体があり、そこを百鬼丸から槍で刺されて絶命。
- 土坊主(つちぼうず)
- 街に悪さをしようと侍に化けて他国から来た、砂に死霊が乗り移った妖怪。わずかな油断から、10年間同じ場所に座ったまま動かない乞食『ぐう太郎』の尻に書かれた経文の力により地面の下に封じられていた。ぐう太郎が、どろろに退かされ経文を消されたことで再び地上へ出られた。
- 泥でできているため刀で刺されても再生する。大量の泥で周りを囲み地中に引きずり込む。目がくらむつむじ風を起こすこともできる。おびき出されて網をかけられ川に落とされ百鬼丸から斬り刻まれて現した煙のような本体を、刀でメッタ斬りにされて絶命。
- 倒すと百鬼丸に皮膚が戻った。
- 草鞋の妖怪
- 26話『最後の妖怪』に登場。巨大な古草鞋の妖怪。わらの縄で首を絞めつけてくる。どろろと別れて単独で旅をする百鬼丸の腕の刀で斬られ絶命。
- 大貝
- 26話『最後の妖怪』に登場。巨大な二枚貝の妖怪。どろろと別れて単独で旅をする百鬼丸に、水中戦で体内から刀で殻を割られて倒された。
- 蟻地獄
- 26話『最後の妖怪』に登場。巨大なアリジゴクの妖怪。砂地に巨大なすり鉢のようなくぼみを作り、どろろと別れて単独で旅をする百鬼丸を底に引きずり込んで強力な2本の顎で仕留めようとしたが、腕の刀で2本の顎を斬られ倒された。
- 人面の皮を持つ妖怪
- 26話『最後の妖怪』に登場。大木に死霊が宿った化け物で、どろろと別れて単独で旅をする百鬼丸と戦う。23話『人食い大木』の回を使いまわしているため、人食い大木と同じ顔をしているが顔のあたりだけ映り全身は映らなかった。人食い大木とは違い、百鬼丸から刀で顔を真横に斬られたあとに額を刺され絶命。DVD-BOX封入解説書では、第23話の人食い大木と仲間と思われると解説されている。
- 総監督 - 杉井ギサブロー
- 設定 - 勝井千賀雄、鈴木良武
- 作画監督 - 北野英明、上口照人
- 作画 - 進藤満尾
- 美術監督 - 槻間八郎
- 背景 - 明石貞一
- トレス - 北岡光代
- 彩色 - 高橋富子
- 撮影監督 - 熊谷幌史
- 撮影 - 森昭彦
- 音響 - 田代敦巳
- 録音 - 東京スタジオセンター(渡辺進)
- 効果 - 柏原満
- 現像 - 育英社
- 編集 - 松浦典良
- 音楽 - 冨田勲
- 演奏 - フールサンズセレナーダス(中村英夫)
- 製作 - 柴山達雄
- 製作助手 - 金沢秀一
- フジテレビ担当 - 八百板勉
- 制作 - 虫プロダクション、フジテレビ
- 初期オープニング「M-6」
- 作曲 - 冨田勲
- 通常版オープニング・エンディング「どろろの歌」
- 作詞 - 鈴木良武 / 作曲 - 冨田勲 / 歌 - 藤田淑子
歌詞は「ほげほげたらたら ほげたらぽん」の繰り返しで始まり、「おまえらみんなほげたらだ ほげほげたらたら ほげたらぽん」で終わる。「ほげたら」はバカモノと同義とされる。
オープニング映像は、農民一揆の絵が有名な『一揆』版と、どろろが屋根瓦をリズミカルに走る『コミカル』版が2種類(改題前と改題後)の3種類、テロップの表記や、メインタイトル部分[注 3]の変化も含めると全部で6種類あり、映像は途中から変更され時期によって違うものが流された。『一揆』版と比べて『コミカル』版は、どろろと百鬼丸が前期より多く登場する内容となっている。
本放送時、最初期のオープニングでは「どろろのうた」は使用されず、本編や次回予告でも使用されている男声コーラスのBGMが使用された。このコーラス版オープニング映像はフィルムとしては現存しておらず、DVD-BOX発売時に現存する音声テープと『一揆』版の通常オープニング映像を合成して再現され、特典映像として収録された[12]。再放送や映像ソフトでのオープニングは、全て「どろろのうた」が流されている。
オープニングで流れる「どろろのうた」は1番と3番を繋いだ2コーラス構成になっている。テロップ上では「どろろの歌」や「どろろの唄」と表記されており、朝日ソノラマの社名も表記されていた。また「どろろのうた」の3番まであるフルコーラスのステレオ音源に関してはテイチクエンタテインメントが所有しており、テレビサイズとは歌い方も異なっている。この3番まであるステレオ音源が収録されたものはいずれもテイチクから発売されており、EP盤が1969年6月5日に『KT-28 テレビ・マンガどろろ』として「百鬼丸の歌」 [注 4]も収録されて発売されており、CDでも1998年9月23日に発売された『復刻 手塚治虫作品傑作集/鉄腕アトム』や2001年12月19日に発売された『TVアニメ・グレイテスト・ヒッツ』などに収録されている。
話数 |
放送日 |
サブタイトル |
脚本 |
演出
|
1 |
1969年 4月6日 |
百鬼丸の巻 その一 |
(ノンクレジット) |
出崎統
|
2 |
4月13日 |
百鬼丸の巻 その二 |
遠藤政治
|
3 |
4月20日 |
万代の巻 その一 |
富野喜幸
|
4 |
4月27日 |
万代の巻 その二
|
5 |
5月4日 |
無残帖(むざんちょう)の巻 その一 |
高橋良輔
|
6 |
5月11日 |
無残帖の巻 その二 |
出崎統
|
7 |
5月18日 |
妖刀似蛭の巻 その一 |
勝井千賀雄
|
8 |
5月25日 |
妖刀似蛭の巻 その二
|
9 |
6月1日 |
ばんもんの巻 その一 |
西牧秀夫
|
10 |
6月8日 |
ばんもんの巻 その二 |
南川博
|
11 |
6月15日 |
ばんもんの巻 その三 |
出崎統
|
12 |
6月22日 |
白面不動の巻 その一 |
彦根範夫
|
13 |
6月29日 |
白面不動の巻 その二 |
高橋良輔
|
14 |
7月6日 |
妖怪かじりんこん |
鈴木良武 |
奥田誠治
|
15 |
7月13日 |
いないいない村 |
高橋良輔 勝井千賀雄
|
16 |
7月20日 |
妖馬みどろ |
さわきとおる |
富野喜幸
|
17 |
7月27日 |
妖怪どんぶりばら |
鈴木良武 |
高橋良輔
|
18 |
8月3日 |
海獣ビラビラ |
さわきとおる |
北野英明
|
19 |
8月10日 |
雷火犬 |
鈴木良武 |
石黒昇
|
20 |
8月17日 |
おんぶら鬼 |
高橋良輔
|
21 |
8月24日 |
まいまいおんば |
虫プロ文芸部 |
南川博
|
22 |
8月31日 |
妖怪もんもん |
鈴木良武 |
岡崎邦彦 高橋良輔
|
23 |
9月7日 |
人食い大木 |
平見修二 |
奥田誠治
|
24 |
9月14日 |
四化入道 |
杉山卓
|
25 |
9月21日 |
妖怪土坊主 |
鈴木良武 |
杉山卓
|
26 |
9月28日 |
最後の妖怪 |
北野英明
|
| この節の 加筆が望まれています。 (2019年6月) |
- ライリー商会から1970年代に家庭用8mmホームムービーで、2分半の内容へ編集した無音のカラーパイロットフィルム版と、1話を各10分程の内容へ編集したうえ家庭用サイレント映写機への救済措置として音声カセットテープを付属した『おんぶ地蔵』と『最後の妖怪』が発売。
- にっかつビデオフィルムズから1980年代にVHS全2巻が発売。第1巻には第19話・第21話・パイロットフィルムを、第2巻には第23話・第25話を収録。
- 1998年1月25日に全話とパイロットフィルムを収録したLD-BOXが発売。
- 2000年6月21日に東映ビデオから全話を収録したVHS『どろろ』全3巻と『どろろと百鬼丸』全3巻が発売。
- 2002年11月21日にコロムビアミュージックエンタテインメントから、LD-BOXの内容に加え、32ページの封入解説書、絵コンテ集、新たに発見された次回予告フィルム、映像特典に、前期版ノンテロップ・オープニング、前述のコーラス版・再現オープニング、静止画の映像設定資料集、解説書に、原作とアニメの関係、モチーフの原形、どろろ回想録、8人のスタッフへのインタビューが収録されたDVD-BOXが発売された。絵コンテ集には、前・中・後期それぞれのオープニング、11話、16話、パイロットフィルムが、当時演出を担当した各スタッフのミニインタビューと一緒に絵コンテがそれぞれ収録されており、特選されたオープニング原画や、『冒険王』の再録記事『TVまんが どろろのできるまで』も収録されている。2005年9月21日には手塚治虫生誕80周年を記念してDVD-BOXの安価版『どろろ Complete BOX』が発売された。ただし、このComplete BOXは絵コンテ集は無く、インナージャケット、チャプターカード等は省略されている。
- 単品販売のDVDは発売されておらずレンタル用のみ。
- 原作
- 百鬼丸は魔物をすべて倒す前にどろろと別れ、どこかへ去ってしまう。その後の百鬼丸の行方は誰も知らず、さらに50年後に、48体の魔物像が奉ってあった地獄堂が戦火で消失したことがナレーションで語られ終幕する。
- 1969年版
- どろろを村へ残し、百鬼丸は独りで魔物を倒す旅へ出る。戦い続けた百鬼丸は47体目の魔物を仕留め、失っていた片腕を取り戻す。あと1体倒せば人並みの身体へ戻ることができると勇む百鬼丸であったが、最後の魔物の1体が醍醐景光であることを知る。百鬼丸は仕官を装い景光に近づくが、企みを看破され責めを受ける。しかし、その様に耐えられず縫の方が百鬼丸を庇い、逆にそれまでの景光の行いを責める。妻から責められた景光は激憤し、縫の方や部下を殺害して地獄堂へと向かう。景光は再度力を求めて自らの体を差し出そうとするが、既にその体は人でなくなっていると魔物に嘲笑され発狂する。そこへ後を追ってきた百鬼丸と対峙、実の親を斬るのかといきり立つが、「自分の親は自分を拾い育ててくれた寿光ただ一人だ」と斬り捨てられ、景光は地獄堂と共に焼け落ちる。最後の魔物を倒した百鬼丸は失われた身体の部位をすべて取り戻すが、もう誰とも会いたくないと、どろろと再会することもなく姿を消す。景光の圧政から解放された村人とともに、どろろが新たな人生に走り出すところで終幕。
- 少なくとも同作品においては、48匹の魔物の妖怪はあくまでも48体の魔神の分身でしかないことが最終話で明示されている。
後述の2019年版の放送を記念して、2019年6月7日から8月1日まで、YouTubeの「手塚プロダクション公式チャンネル」[17]より毎週金曜日と土曜日に、それぞれ2話分の期間限定(2週間)配信が行われていた。その後2024年2月3日から同チャンネルで、全話の期間限定配信が行われ、更に同年3月8日からは全26話まとめての無料配信が、それぞれ同年4月2日まで行われ、同年10月23日から2025年1月10日まで(予定)同チャンネルで3度目の再び期間限定配信が行われている。配信期間は次の通り。
配信話 |
配信期間 |
備考
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2019年 |
2024年 (2話分) |
2024年 (全話) |
2024年 - 2025年 (全話)
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1 |
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6月7日 |
6月20日 |
2月3日 |
4月2日 |
3月8日 |
4月2日 |
10月23日 |
1月10日 (予定) |
OPの映像は「一揆」、曲は「どろろの歌」である。
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3 |
4
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6月8日 |
6月21日 |
2月6日 |
10月25日 |
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5 |
6
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6月14日 |
6月27日 |
2月8日 |
10月28日 |
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7 |
8
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6月15日 |
6月28日 |
2月10日 |
10月30日 |
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9 |
10
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6月21日 |
7月4日 |
2月11日 |
11月1日 |
第9話からOPの映像が変更されている。
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11 |
12
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6月22日 |
7月5日 |
2月15日 |
11月4日 |
第12話の次回予告は音声のみで映像は無い。
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13 |
14
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6月28日 |
7月11日 |
2月17日 |
11月6日 |
第13話から次回予告担当がナレーターの納谷悟朗からどろろ役の松島みのりに変更されている。 第14話から改題された。
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15 |
16
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6月29日 |
7月12日 |
2月20日 |
11月8日 |
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17 |
18
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7月5日 |
7月18日 |
2月22日 |
11月11日 |
第17話からOP映像で百鬼丸が戦う妖怪が変更されている。 第18話の次回予告は音声のみで映像は無い。
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19 |
20
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7月6日 |
7月19日 |
2月24日 |
11月13日 |
第20話からOP前に『カルピスまんが劇場』のタイトルが入る。
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21 |
22
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7月12日 |
7月25日 |
2月27日 |
11月15日 |
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23 |
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7月13日 |
7月26日 |
2月29日 |
11月18日 |
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26
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7月19日 |
8月1日 |
3月2日 |
11月20日 |
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2019年1月から6月まで、TOKYO MXほかにて全24話が放送された[18][注 5]。制作はツインエンジン、放送時間は放送局の節を参照。ナレーションは麦人[20][21]が務める。
同作品の企画がスタートしたのは2016年頃で、手塚の原作絵を活かしたアニメ化の路線も考えられていた[22]。その後2018年3月19日に新たなテレビアニメ化が正式に発表された[23]。
原作の大まかなストーリーや設定は活かしつつ、キャラクターのデザインや設定に大幅なアレンジが施されている。特に百鬼丸の性格設定が原作とは大きく異なる。
第23回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員会推薦作品[24]。
醍醐の国の領主・醍醐景光は地獄堂の十二の鬼神に領土の守護と権力を願うが、代わりに生まれたばかりの息子から体が欠損する。それから16年後、盗みで生き抜く孤児のどろろは、義手に仕込んだ刀で妖怪を倒し、皮膚を取り戻した青年・百鬼丸と出会う。景光の子は川に流されたあと、医師の寿海に保護されていた。彼は百鬼丸と名付けられ、義手と義足をつけて育てられた後、失った体を求めて旅をしていた。どろろは百鬼丸の旅に同行。百鬼丸は妖怪を倒すたび、体を取り戻して行き、どろろにも心を開いて行く。
やがて妖怪を倒しても体が戻らないことに気付いた百鬼丸は、醍醐の国へ向かうと、繁栄を謳歌していた醍醐の国では戦や疫病によって再び国が乱れようとしていた。景光の息子で百鬼丸の弟・多宝丸は、百鬼丸こそが国を滅ぼす鬼神として、百鬼丸に立ち向かう。死闘の末、百鬼丸は多宝丸と最後の鬼神を倒し、全ての体を取り戻す。
景光は再び地獄堂にこもり、亡くなった多宝丸と共に国を守る鬼神となることを願うが、景光に対し百鬼丸は「人として生きろ」と諭し、一人旅に出る。どろろは村人たちに、亡き父親が遺した隠し財産で武士に頼らない新しい国を作ることを提案。百鬼丸との再会を願いながら戦国の世を歩きだす。
- 百鬼丸(ひゃっきまる)
- 声 - 鈴木拡樹[20][21]
- 年齢は第一話の時点で16歳。容姿は母親似。原作とは異なり誕生時は普通の赤子として誕生し、すぐに鬼神により体の部位を奪われる。本作では鬼神によって失われた体の部位は11か所となっている。
- また、原作の百鬼丸はテレパシーと超感覚を備えた超能力者であり、身体が無くとも他者とのコミュニケーションや日常生活にはほとんど不自由していなかったが、同作品においては第六感でぼんやりと見える魂の色で敵意を判別できる程度であり、第一話の時点では目も見えず、耳も聞こえず、口もきけない上、皮膚の代わりに精巧な仮面を顔にかぶっているため表情も無い身体障碍者であることがはっきりと描かれている。そのため、放送開始前より百鬼丸役として告知されていた鈴木拡樹の声が劇中で聞こえるのは、声を取り戻した第五話からとなる[25]。また、痛覚を取り戻したことで戦闘のダメージを感じるようになったり、聴覚を取り戻したことで慣れない音に悩まされたりするなど、本当の身体を取り戻したことによるデメリットが描かれている。さらに、精神面では原作や1969年版で心が十分に人間として描かれていたのに対し、同作品では身体の欠損故に五感も奪われており、その心はまるで生まれたての子供のように未成熟・未分化の状態として描かれている[26]。
- 赤子の頃、産婆により川に流されたところを寿海に拾われ、義肢などの仮の身体を与えられ彼の元で育ち、寿海の元を離れた後、鬼神・泥鬼を倒す際にどろろを助け、以後2人で旅するようになる。聴覚を取り戻し、慣れない音に苦しんでいる時にミオと出会い、彼女の看病を受ける。その後、後述の蟻地獄との戦闘に入るも右足を食われ、相手に手傷を負わせることで同時に声を取り戻す。負傷した状態で無理に戦おうとするもミオに止められ、再び看病されながら彼女と心を通わす。その後、彼女のために蟻地獄を死闘の末に倒すも、ミオや孤児たちを武士たちに殺され、怒りで我を忘れ、修羅の如く武士たちを皆殺しにする[注 6]。殺戮を終えるとミオの遺体を抱きしめ、初めて彼女の名を呟く。この出来事は百鬼丸の心に深い悲しみを抱かせることになる。その後はどろろと共に各地を回りながら、体を取り戻して行く。また、当初はたどたどしかった口調も回を追うごとに流暢になってきており、簡単な受け答えぐらいなら直ぐにこなせるようになった。第十一話にて醍醐領で九尾と戦い、死闘の末に逃してしまう。その後、父・景光と邂逅する。再会直後に景光に命を狙われ、その時に景光が発した言葉に疑問を抱いたため景光の屋敷へ行き、自身の出自を知る。その後は、父だけでなく母や実の弟とも敵対することとなってしまい、以前よりも鬼神を倒すことに固執するようになり、なりふり構わない言動が目立つようになった。ミオを殺された怒りから人を殺めて以降、その魂の色には鬼神の残り火が強く現れるようになった。マイマイオンバを倒したことで、鬼神を倒すと醍醐の国に様々な災厄が降りかかることを間接的に実感するも、体を取り戻すことを諦める気は無く、誰を犠牲にしようとも体を取り戻すと決めている。また、マイマイオンバとの約定について語る鯖目と出会ったことで、醍醐の親族にも強い敵意を抱くようになる。マイマイオンバとの戦いで左足の義足を失ったため、再び義足を求めて寿海の元に赴くが、鬼神と醍醐との約定について聞いた寿海に拒否される。その後、二郎丸を倒したことで本来の左足が戻った。第二十話で、三郎太と鵺によってどろろと共に崖から落下した際にどろろの腕が岩に挟まって動けなくなってしまい、結果的に自分1人だけの力では助け出すことができなかった。この出来事をきっかけに、より自分の身体を取り戻すことに執着するようになり再び醍醐の国に行き身体の残りの部分を取り戻すことを決意する。第二十一話の終盤で、自分を亡き者にしようとする醍醐の兵達と戦闘になり、その最中にどろろを連れ去られてしまう。その後、第二十二話では自身と同様に醍醐に恨みを抱いて妖怪と化したミドロ号の力を借り、醍醐の兵を殺戮して回る。また、どろろがそばに居ないせいか、半ば狂乱状態で見境が無くなりつつあり、第二十三話で多宝丸と戦っている際にどろろと縫の方と遭遇し、どろろに戦いを止めるように言われるも、縫の方を見るやその場から逃げるように立ち去る。その後は、自分の体を取り戻すことへの執着と周囲の考えとの違いから葛藤するも、多宝丸を追い掛け醍醐の城で一騎討ちの戦いに突入する。第二十四話では、多宝丸をあと一歩のところまで追い詰め、とどめを刺そうとするも、寸前にどろろやこれまで出会ってきた者たちのことが頭をよぎり思いとどまる。直後に改心した多宝丸から目を返され、その場に現れた十二体目の鬼神を一刀両断し、駆け付けた寿海と縫の方によって抜け道から逃がされ、どろろと再会する。それからは崩れ落ちる醍醐の城を見届ける。後日、どろろと共に集落に留まりながら、自分がどうすべきかを考え、地獄堂にて景光と再会し対話するも、景光を斬ることなく、自分は修羅の道には行かないことを告げ、「あんたも人として生きろ」と諭し、地獄堂を後にする。それからはどろろには何も告げずに人知れず旅に出て、数年後の成長したどろろとの再会を示すような描写で物語は幕を閉じる。ちなみに雑誌アニメージュにおけるアニメキャラ人気投票では百鬼丸が群を抜いた票数で1位に輝いている[27]。
- どろろ
- 声 - 鈴木梨央[20][21]
- 年齢不詳。容姿は母親似。性格は父親に似て強気で強情であり、イタチからも指摘されている。男勝りな性格と口調だがれっきとした女の子で、第九話にて病に倒れたどろろを看病した尼僧より女の子であることが明言されている。原作では百鬼丸の持つ名刀を盗むのが目的と称して旅の連れをしていたが、同作品においては百鬼丸の力で妖を退治してその礼金を得るために連れとなり、戦闘力はあるが日常生活に危なっかしいところがある百鬼丸を世話している。第四話で憑りつかれた妖刀似蛭から助けられた際に、百鬼丸を「兄貴」と呼ぶようになる。生意気だが、人懐っこい性格。しかし、戦乱の世を生き抜くだけあって、ミオの夜の仕事にも理解を示すなどシビアな面もある。どろろの存在は、ミオを失い実の家族とすら敵対せざるを得ない百鬼丸にとっては唯一の心の拠り所となっている。ところが、マイマイオンバとの戦いの後、自身の体を取り戻すためならなりふり構わず、醍醐の国の者達を一切憂慮しない百鬼丸にショックを受け、彼の元を離れてしまう。その後、第十八話で鬼神としての本性を現した二郎丸に襲われていたところを、どろろを捜しにきた百鬼丸に助けられ彼との再会を果たす。第十九話では自身の存在について、「兄貴と一緒に旅ができるのはオイラしかいねえ」と自負している。第二十話では、三郎太と鵺の策略により、右腕が岩に挟まれるが琵琶丸に助けられた。第二十一話の終盤で百鬼丸と醍醐との戦闘の際に醍醐の兵に囚われてしまうが、第二十二話では縫の方に助けられる。第二十四話では百鬼丸を追って醍醐の城に向かい、縫の方と琵琶丸の助けで百鬼丸と再会する。その後は百鬼丸と共に集落で過ごし、人知れず旅に出た百鬼丸との再会を願いながら集落の者たちと新たな生活を始めた。エピローグでは成長した姿が描かれ[注 7]、百鬼丸との再会を示すような描写で物語は幕を閉じる。この最後に関して後に監督が「どろろと百鬼丸はおそらく再会したことでしょう。当時の日本はそんなに広い国じゃなかったわけですし(笑)」と語っている[28]。またブルーレイボックス下巻封入特典のアニメ絵コンテ集にて、どろろの成長後の年齢は12歳のイメージであったことが判明している[29]。
- 第十三話で温泉に入った際に背中に地図のような模様が浮き出していたが、原作と異なり本人に自覚はなかったようである。その後、第十五話の終盤で百鬼丸と別れた直後、偶然再会したイタチに背中にある地図を見せるよう迫られ、第十六話ではイタチに捕らえられて金探しに利用される。その後、協力して三郎丸を倒すが、それでもイタチは考えを改めず、第十八話で彼により縄で縛られて鬼神化した二郎丸に喰われそうになった所を百鬼丸に助けられ仲直りする。父親の隠し財産を見つけるが、以前琵琶丸から受けた助言に従ってほとんど手を付けずに立ち去り、最終話の終盤で新しい国を作るため、財産を取りに行く。
- 琵琶丸(びわまる)
- 声 - 佐々木睦[20][21]
- 同作品では「琵琶法師」ではなく「琵琶丸」名義。狂言回しとして大幅に出番が増えており、百鬼丸との出会いも彼の出生時に早められている。盲目ではあるが、百鬼丸と同様に相手の魂の色が炎のように見えるため、琵琶に仕込んだ刀で妖怪を斬り伏せるなど腕が立つ。赤子の頃から百鬼丸の魂の中に鬼神の色を感じ、気にかけていた。一人旅をしており、百鬼丸とどろろの連れではないが、行く先々で偶然出会う縁を持つ人物。第十一話で百鬼丸と再会したとき、百鬼丸が人を殺めたことを察知した。第十四話では、どろろに地図を遺したどろろの両親の覚悟や、お金を見付けた後の使い道についてどろろを諭す一方で、百鬼丸には鬼神を倒して体を取り戻しても、その代償として醍醐領に災厄が降りかかることや、鬼神を倒した後の目的が現段階では皆無であることを殊更に強調し、第十五話でどろろと百鬼丸が決別する遠因となる。第二十話では、三郎太と鵺によって百鬼丸と共に崖から落とされ岩に腕が挟まり動けなくなったどろろを助けた。第二十四話ではどろろの手助けをし、その後は百鬼丸やどろろと共に崩れ落ちる醍醐の城を見届ける。後日、集落で金の使い道について語るどろろに対して、かつて自身も侍であったことをほのめかす言動をしている。
- 醍醐 景光(だいご かげみつ)
- 声 - 内田直哉[18][20]
- 私利私欲のみを理由に生まれる前の息子を魔物の生贄とした原作とは異なり、同作品では「天下に名を轟かせたい」という望みと同時に、たび重なる飢饉と流行り病によって死を待つばかりの領民をどうにかしたいという思いを抱いており[26]、神仏に祈っても無駄だったため鬼神と契約して望んで外道に堕ちた。息子の生贄も自分で指定したわけではなく、「天下以外で我が手に入るものなら何でも」差し出すと言った結果、後に身体が無い赤子が生まれたため、これが代償だと悟っている。
- 赤子を捨てて以来、領地は繁栄を続けていたが、近年になって地獄堂の鬼神像が破壊されるたびに領地に災厄が起こるようになったため、赤子の行方を捜すよう配下に命じる。また、醍醐領のみが極端に潤ってしまったため、それを狙う朝倉、酒井、柳本といった周辺の各所領と戦が絶えない。第十一話にて百鬼丸と邂逅する。自分の行いの非を認めつつも国のためにやむを得ない犠牲だったとしており、百鬼丸を亡き者にしようとする。第二十四話では朝倉との戦の結果、多くの兵を失い、地獄堂にて座禅を組んでいる最中に百鬼丸と遭遇する。その際も自身の行いを悔い改めることはなかったが、百鬼丸が自身を殺さず彼から人として生きるよう諭されたことから、百鬼丸を鬼神の生け贄にせず跡取りにしていれば、真に自分が望んだ国を作れたことを悟って自身の行いを悔い、その場に泣き崩れる。その後は消息不明となっている。
- 多宝丸(たほうまる)
- 声 - 千葉翔也[18][20] / 松田颯水(子供時代)
- 五体満足の身体で生まれたため、景光の跡継ぎとして何不自由なく育てられたが、母の関心が自分以外の何者かに向けられていることを幼少時より察しており、常に満たされない思いを抱いている。また、かつての醍醐領の有様を伝え聞いており、現在の発展を景光の手腕と信じ深く尊敬している。第十話「多宝丸の巻」では苦しんでいる村人の求めに応じて妖怪退治を買って出て、蟹化物との戦いの中で、個人の武勇や部下を率いる指揮能力、作戦立案能力、兵士や領民を鼓舞するカリスマ性といった次期領主としての器量を備えた人物として描かれている。また、自身の非力を恥じる面などもあり、原作のような傲慢な人物像とかけ離れている。第十二話で百鬼丸の存在と両親の過去を知る。当初は百鬼丸に同情的であり景光の非道を一度は非難するも、百鬼丸を助ければ自国が滅びることを告げられ葛藤する。民を見捨てることが出来ず、最終的に百鬼丸と敵対する道を選ぶ。以後は情で刀を鈍らせまいと、長い眠りから覚めた縫の方にすぐに会わなかったり、民家の屋根裏に住み着いた妖怪の家族を殺すために家に火を放ったりするなど、敵に対しての慈悲の心を捨てたような行動を取るようになる。第十八話では、兄である百鬼丸のことも敬称の「兄上」ではなく「百鬼丸」と呼び捨てにし、迷いの無い攻めで百鬼丸を窮地に陥らせたが、しらぬいの介入によって戦いは痛み分けに終わった。第二十一話の終盤で、再び百鬼丸と対峙するも、陸奥と兵庫を負傷させられ、やむを得ず撤退する。その後、第二十二話では負傷させられた2人を見て、百鬼丸に激しい憎しみを抱くようになり、十二体目の鬼神の元に向かった陸奥を連れ戻すために兵庫と共に彼女の元に向かい、十二体目の鬼神から失った目と額に百鬼丸の目を授けられ、それぞれ失った部位を取り戻した陸奥と兵庫を引き連れて百鬼丸の元に現れ、百鬼丸の体を奪うために戦いを仕掛ける。第二十三話で陸奥と兵庫を失い、より決意を固め醍醐の城で百鬼丸に一騎討ちを仕掛ける。第二十四話では百鬼丸との死闘の末に敗北するも、自身の命を奪わなかった百鬼丸に対して敗北を悟り改心する。直後に自ら目を抉って百鬼丸に返し気を失う。その後、城に駆け付けた縫の方と寿海に見守られながら、最期は2人と共に焼き崩れる醍醐の城の中で運命を共にした。改心した後は再び百鬼丸のことを「兄上」と呼んでいる。また、百鬼丸への敵意も縫の方の気持ちが百鬼丸に向いていたことに由来しており、縫の方の膝の上で今まで寂しい思いをさせてきたことを謝罪され、安心するように静かに眠り、息絶えた。
- 上述の通り、原作や1969年版とは異なり、最後の鬼神となる。
- 「ばんもん」で百鬼丸と斬りあった際に右目を負傷する。なお、原作の「ばんもん」では百鬼丸により討たれていたが、同作品では生存している。また、原作では髪の毛が蟹の足のように頭の左右に広がった独特の髪型をしていたが、同作品では面影を多少残しつつも容姿が修正されており、父親似。
- 陸奥(むつ)、兵庫(ひょうご)
- 声 - 棟方真梨子(陸奥)[30][31] / 松田健一郎(兵庫)[30][32]
- 同作品のオリジナルキャラクター。多宝丸に幼いころから仕える武士の姉弟。陸奥は弓を得意とする男装の女性で[注 8]、兵庫は鉄棍を武器とする巨漢である。多宝丸のためであれば命を捨てることも辞さないどころか、味方であるはずの醍醐方の武士に自白剤を盛るなど手段を選ばない。陸奥によれば、2人とも幼少時に囚われの身になっていたらしく、第二十一話の回想では、景光に救われ多宝丸と共に姉弟同然で育った様子が描かれた。同話の終盤にて、百鬼丸との戦闘の際に兵庫は右腕を、陸奥は左手を失う。その後、第二十二話で流行り病に冒されていることが判明した陸奥は、多宝丸のために鬼神に自らの身を捧げようとするも、十二体目の鬼神から求めるのは百鬼丸の体のみと知らされ、多宝丸共々、失った体の部位に該当する百鬼丸の肉体を授けられ、百鬼丸の前に姿を現す。第二十三話では多宝丸と百鬼丸の戦いを邪魔させないようミドロ号と戦い、ミドロ号の隙を突いて兵庫が刀を突き刺すが、最後の力を振り絞ったミドロ号によって、首を食いちぎられたうえ、陸奥も後ろ足で蹴り飛ばされ、息を引き取る[注 9]。2人が命を落とした直後、百鬼丸が両腕を取り戻した。
- 寿海(じゅかい)
- 声 - 大塚明夫[18][20]
- 同作品では、戦場を回り体の部位を失くした死体に義手・義足などを付けて弔う医師として登場する。第三話「寿海の巻」では彼の過去が回想として掘り下げられている。元は斯波氏の家臣であり、主君の命で逆らう民を磔にして指や耳を切り取って痛めつけてから殺していた。自身の所業に耐え切れず崖より海へ身を投じるも、大陸の船に拾われて命を長らえ、義手・義足などの制作技術を身に着け、日本に戻る。その技を生かして医師として周辺の民から慕われていたが、義足を与えられ寿海を「師匠」と慕っていた孤児のカナメは、寿海が父の仇と知り激高し、侍に腕を切られた子供に義手をつける手伝いを最後に義足を捨てて立ち去ってしまう。その直後に、川を流されてきた身体の欠損した赤子と出遭う。赤子に百鬼丸という名前と義手・義足を与え育てる中で、物の怪が百鬼丸に引き寄せられることに気付き、自衛のために剣術を教える。ある時、百鬼丸が物の怪を倒した直後に生身の右足が生えたのを目の当たりにしたことで、彼の身体が物の怪に奪われていることを悟り、義手に刀を仕込んで旅立たせた。
- 第十七話「問答の巻」に再登場し、視覚を除く五感を取り戻した百鬼丸と再会、彼が無事に生きていたことに感動するが、景光が彼の背中(五体すら鬼神に預けた)に背負わせたものを聞いて、自身が百鬼丸を助けたことを後悔する。それでも、百鬼丸が1人ではないと知ったことや、彼から「おっかちゃん」と呼ばれたことなどから、安心して彼を送り出す。
- 第二十三話「鬼神の巻」より三度登場。第二十四話「どろろと百鬼丸」では、燃え盛る醍醐の城へ入り、助けた縫の方と共に百鬼丸と多宝丸の居る場所へ行って、「人の心を宿しなさい」と百鬼丸を諭した後、焼き崩れる醍醐の城と運命を共にする。
- 多くの命を奪ったことから己自身の命に価値を見出だしておらず、生きる気力も無いため、妖怪からは死人と見なされ襲われることがなかったが、第十七話の最後で妖怪に認識され、足に噛みつかれたことから、再び生気を取り戻した模様。
- 縫の方(ぬいのかた)
- 声 - 中村千絵[18][20]
- 同作品では、景光の命令で百鬼丸を捨てたのは産婆であり、縫の方本人は赤子を手放すことを拒んでいた。次男である多宝丸も母として愛しているが、長男の赤子のことを常に気にかけており、赤子が生まれた際に首が砕けた菩薩像を修理することなく、そのまま祈りを捧げている。第十二話で百鬼丸と再会するも最終的に自分は百鬼丸の味方になることは出来ないと悟る。首の無い菩薩像を携えて「ばんもん」に駆けつけて百鬼丸に謝罪しながら泣き崩れ、せめて自分の身を捧げようと自害用の脇差しを胸に突き立てた。一命は取り留めたが長い間床に臥せっており、第十七話でようやく目覚める。目覚めた直後、百鬼丸の身代わりとなって首が奪われた菩薩像が砕け散った以上、鬼神との約定による醍醐領の繁栄は無理だと景光に告げるが、気のせいだと一蹴される。その後、第二十二話では捕らえられたどろろを救い出し、百鬼丸に会いたい気持ちを抑えきれずにどろろと共に城を出るが、川を下っている際に船が転覆し、どろろと共にミドロ号の生まれ故郷に流れ着く。第二十三話では、百鬼丸と多宝丸の異様とも言える壮絶な戦いを目の当たりにして、鬼神との約定による醍醐の繁栄が如何に脆いものかを再認識した。その後、醍醐の城が燃えているのを見て、息子たちが戦っているのならば見届けなければいけない、と城を目指す。第二十四話では、琵琶丸や寿海に助けられながら百鬼丸と多宝丸の居る場所にたどり着き、百鬼丸を見送った後、多宝丸に今まで寂しい思いをさせてきたことを謝罪し多宝丸を膝の上に寝かせ、焼き崩れる醍醐の城の中で運命を共にした。
- 彼女の持つ首の無い菩薩像は百鬼丸や琵琶丸の第六感では人とも鬼神とも異なる緑色に見えるが、これが何を意味しているのかは最終話でも明かされなかった[注 10]。
- 初対面の寿海が一目見ただけで百鬼丸の母親だと気付くほど百鬼丸と容姿が似ている。
- 僧侶(そうりょ)
- 声 - 佐々木義人
- 醍醐景光を地獄堂に案内した僧侶。原作の上人とほぼ同じ役回りであるが、この地獄の世で祈るのは空しく、自身に御仏に対する疑念が生まれる前に斬られて救われたと、景光に礼を言いつつ息絶える。
- 田之介(たのすけ)
- 声 - 高橋広樹[33]
- 第四話「妖刀の巻」に登場。元々は穏やかな妹想いの人物。原作同様、似蛭にて機密保持のため大工を処刑するが、さらに仕えている武将やその郎党も皆殺しにする。その後は辻斬りを行い続け、百鬼丸と対峙し、2度の戦いを経て百鬼丸に討たれる。しかし、その死顔は似蛭から解放され、安らかなものだった。
- お須志(おすし)
- 声 - 井上麻里奈[33][34]
- 第四話「妖刀の巻」に登場。原作同様、田之介の妹。同作品では、田之介の失踪後、家を捨て行商人として各地を行商しているという設定。作中、聴覚を取り戻した百鬼丸が最初に耳にしたのは、雨の音と兄の死に悲しむ彼女の慟哭であった[26]。
- ミオ
- 声 - 水樹奈々[35][36]
- 第五・六話「守子唄の巻」に登場。子守唄を歌う少女。原作および1969年版とは違い、同作品ではどろろとも対面しているほか、OPアニメーションにも登場している。孤児の面倒を見たり、見ず知らずの百鬼丸を看病するなど心優しい性格。それと同時に売春をしている自分を忌々しく思いながらも、侍のために泣かないといった覚悟をもっているなど強く聡明な人柄。聴覚に慣れず自分の声すら厭う百鬼丸が、彼女の唄だけは好ましく聞いている[26]。原作同様、廃寺に子どもたちと住んでいるが、夜に酒井方の陣を訪れ、雑兵に春をひさいで収入を得ていた[注 11]。醍醐方の陣でも仕事を始めるが、粗暴な扱いを受け負傷する。さらに酒井方にも出入りしていることが発覚し、密偵の疑いをかけられ孤児たちもろとも殺されてしまう。彼女の死は、百鬼丸とどろろの2人に深い影を落とすことになるが、その悲しみと怒りは百鬼丸が初めて喋るきっかけともなる。死後、彼女が所持していた米の種は百鬼丸が彼女の形見として大事に所持している。
- タケ
- 声 - 寺崎裕香
- 第五・六話「守子唄の巻」に登場。ミオを除く孤児のリーダー格。しかし、密偵の疑いにかけられ、ミオや孤児と共に殺されてしまう。原作および1969年版では名前がなかったものの、同作品で名前が付けられた。また、同作品ではどろろとも対面している。
- 弥二郎(やじろう)
- 声 - 小松史法[37][38]
- 第七話「絡新婦の巻」に登場。石切の村で働く人足。その正体は、石切場から足抜けしようとする者を抜け道に案内する「逃がし屋」。深手を負った絡新婦を匿い、心を通じ合わせる。「おはぎ」と呼んだ絡新婦を逃がす途上、逃がし屋狩りの武者に見つかり、肩を射抜かれ深手を負ってしまう。激高する絡新婦が百鬼丸とも戦おうとするのをなだめ、敵意を治める。その後2人は見逃され、抜け道を使って何処かに消える。
- さる
- 声 - 金田アキ[39]
- 第八話「さるの巻」に登場。硫黄の谷の村の近くに住む野生児。両親を早くに亡くして山間に住み、獣を狩って暮らしていたが、村の人々からは迫害を受けていた。唯一優しく接してくれたお梅が、残され雲の「嫁」として捧げられそうになったため、百鬼丸とどろろとともに残され雲を退治しようと奮闘する。
- お梅(おうめ)
- 声 - 小林沙苗
- 第八話「さるの巻」に登場。硫黄の谷の村で、唯一さるに優しく接していた女性。残され雲の「嫁」として生贄に捧げられそうになる。助けに来たさるを逆に庇って残され雲に喰われてしまうも、突進してくる残され雲の口に自分から飛び込む形になったため丸呑みされたことが功を奏して体内で生存しており、鬼神の撃破と共に救出された。最後は、さると共に村で生きていくことを決める。
- 火袋(ひぶくろ)
- 声 - 三宅健太[40]
- 第九話「無残帳の巻」に登場。どろろの父親。農民出身者のみで構成された、侍を襲う野伏の頭目。手下のイタチが侍に取り入って生きようと主張するのを一蹴し、そのまま野伏を続けるつもりでいたが、領主に寝返ったイタチの裏切りにより手下の多くを失い、自身も足に多数の矢を受け、得物である長巻を杖代わりに歩くのがやっとの身になってしまう。その後は親子3人で放浪をしていたが、ある村で出遭った侍の1人が、かつて自分が討ち漏らした相手だったため戦いになる。1人で敵全員を倒して妻子を守ったが、最後の1人に矢を放たれ道連れに命を落とす。野伏時代に奪った金品の一部を持ち出して、力の無い農民が侍に立ち向かう大義のための資金として岬の洞窟に隠していた。第十四話「鯖目の巻」の冒頭では、過去のシーンとして自分の妻子の背中に隠し財産の在り処の地図を入れ墨として彫るに至った経緯が描かれている。
- お自夜(おじや)
- 声 - 藤村歩[40]
- 第九話「無残帳の巻」に登場。どろろの母親。夫を亡くした後、一人で幼いどろろを連れて育てていた。自分が食べる分の食糧までどろろに譲るなどして徐々にやつれていく。かつての仲間だったイタチが行っていた炊き出しでは、原作と同様に煮えた粥を素手で受け取り火傷する。できた火傷が癒える前に、曼珠沙華の花畑の中で力尽きて命を失った。第六話「守子唄の巻・下」でどろろがミオに語ったところによれば、どれだけ窮しても体を売ることだけはしなかったが、そのせいで死んでしまったとも言われている。第十四話「鯖目の巻」冒頭の過去のシーンで、火袋が隠し財産の在り処を教えようとした際には、自身がそれを知ると大義のためではなくどろろのためだけに財宝を使ってしまうとして、自分からは見えない背中に地図を入れ墨として彫るように求め、どろろには自分の背中にある地図を覚えておくように言い含めていた。
- イタチ
- 声 - 佐藤せつじ[41][42]
- 第九話「無残帳の巻」に登場。原作のイタチの斎吾に相当。頭である火袋を裏切って領主についたのは原作と同様であるが、野伏を続けて全ての侍を敵に回していては先が無いため、頑なに侍を襲うことにこだわる火袋と相容れず裏切った展開となっている。裏切る前はどろろをかわいがっており、どろろの方も懐いていた。後に近隣の食い詰め者を配下に加えるために行った炊き出しの場でどろろとお自夜に再会している。その際も、どろろから顔面に石礫を投げつけられたが予想して受け止め、特に罰を与えることも無く不問としている。
- 第十五話「地獄変の巻」に再登場し、どろろに地図を見せるよう迫って、第十六話「しらぬいの巻」でどろろを捕らえた。地図については火袋の下で野伏をやっていた頃から感付いていたが、火袋を裏切って領主に付き更に領主に裏切られた後、お自夜の墓を掘り起こし彼女の背中を見たことで確信した。第十八話「無常岬の巻」で本格的に金探しに乗り出すが、百鬼丸を追って来た多宝丸の軍勢の猛攻に合ったうえ、しらぬいが爆薬で崖を崩したため、どろろを庇い金を目前に拝みながら死亡した。
- 原作とは異なり最後まで改心することは無く金を求めていたが、どろろが困っていた時に手を組んだり、百鬼丸と多宝丸の決闘中にどろろが呼び掛けようとするも止める一面もあったりと、信頼関係が芽生えた模様。
- 助六(すけろく)
- 声 - 竹内順子[43]
- 第十一・十二話「ばんもんの巻」に登場。醍醐領と朝倉領の国境の砦跡地に残る1枚の巨大な板塀「ばんもん」で、どろろと百鬼丸が出会った少年。夜になると「ばんもん」に現れる化け物の存在を2人に教える。夜になり狐の鬼神である九尾が現れると、2人が戦っている最中に砦を越え故郷の母親に会いに行こうとするが、朝倉領の武士に捕まってしまう。「ばんもん」に磔にされ処刑されかかるも、百鬼丸とどろろに救われ、母とも再会を果たした。原作では多宝丸に殺されるが、同作品では処刑されずどろろに救出され、家族とも再会している。
- 女房(にょうぼう)
- 声 - 長谷川暖[44]
- 第一話「醍醐の巻」に登場。産婆とともに百鬼丸を取り上げた女房。目も鼻も口も無い赤子を見て、恐怖のあまり醍醐屋敷から逃げ出してしまった。第十一話「ばんもんの巻・上」にすっかり正気を無くした状態で再登場し、百鬼丸と鬼神の顛末のような子守唄を石の赤子を抱きながら歌い続けている。町中で百鬼丸を目撃した際や多宝丸に詰問された際には「鬼の子が醍醐に祟りを返しに来た」と慄いた。
- おかか
- 声 - 藤村歩
- 第十三話「白面不動の巻」に登場。原作の「白面不動の手下」に相当する。原作とは異なり、とある滝の裏で不動像を彫り続け、顔を完成させられぬまま亡くなった仏師が、あやかしが憑りついて白面不動と化した不動像の力によって蘇った死人。相手の心を読み、相手が最も油断する姿と声に変化できる。その能力で次々と男たちを捕らえ、顔を白面不動に捧げていた。原作と異なり白面不動が意思らしきものを一切見せないこともあり、完璧な不動像の完成に懸けるおかか本人の妄執の方に焦点が当てられている。捕らえた百鬼丸の顔を剥ごうとするが、それを止めようとするどろろに諭されて自身の妄執の出所が分からなくなり、狼狽したところを白面不動の剣で斬られる。最期は、どろろの顔に手を当てながら穏やかに消滅した。
- 鯖目(さばめ)
- 声 - 遊佐浩二[45]
- 第十四話「鯖目の巻」と第十五話「地獄変の巻」に登場。村1つを治める領主で、焼け寺の跡地を訪れたどろろと百鬼丸に声を掛け、自らの屋敷に2人を招き焼け寺と妖怪の話を聞かせる。その夜、自らの村を守るためマイマイオンバに2人を食わせようとするが失敗する。翌日、自身を尾行して来た百鬼丸に、マイマイオンバとの約定により村の平和を保っていることを明かし、羽化したばかりのマイマイオンバに百鬼丸を襲わせるが、またも失敗。その後、マイマイオンバが物見櫓に衝突したことで発生した火事で村が全焼し、自身が殺した寺の尼を思い出しながら、失意の中で死亡する。
- しらぬい
- 声 - 木島隆一[46][47] / 渡辺優里奈(子供時代)
- 第十六話「しらぬいの巻」と第十八話「無常岬の巻」に登場。火袋が金を隠したとされる岬で、岬に渡るための舟を探していたイタチ一味が出会った片腕の少年。サメの二郎丸と三郎丸を飼い慣らしており、自身の片腕はサメたちに自ら餌として与えた。それ以後、二郎丸と三郎丸が人間の味を覚えてしまったため、様々な人間をサメたちに食わせている。手出しができない海上に誘い出したイタチ一味の半数をサメの餌にした後、サメの腹が空くまでの間その場を離れた隙に見張りに残した三郎丸を殺され、自身も上陸したイタチらに半殺しにされるも、どろろの懇願により止めは刺さずに放置されていた。詳細な過去は語られていないが、子供時代に死んだ母親が干からびてミイラ化するのを座って見ている回想シーンがあり、このことにより人間よりもサメの方が上という考えになったと示されている。三郎丸と鬼神化した二郎丸を失い、悲しみと憎しみに満ちた表情を浮かべながら、全く無関係な醍醐軍も含めて道連れを図って大量の火薬で自爆して崖崩れを起こし、絶命した。
- 宗綱(むねつな)
- 声 - 山路和弘[48]
- 第十九話「天邪鬼の巻」に登場。名の知れた刀鍛冶で、百鬼丸の折れた刀を新調した。天邪鬼が村の神社に封じられていることは知っていたが、本当に封じられているとは思っていなかった。
- おこわ
- 声 - 宮本侑芽[48]
- 第十九話「天邪鬼の巻」に登場。宗綱の娘で、相手に額を擦り付ける癖を覚えてしまった百鬼丸の行動を勘違いして彼に惚れてしまい、彼を百さまと呼ぶようになる。その後、天邪鬼の術にかかって本心とは反対のことを言ってしまう百鬼丸の言葉を真に受けて祝言まで挙げるが、天邪鬼が倒され真相が分かると村の男からプロポーズを受け祝言を挙げていた。
- 賽の目の三郎太(さいのめのさぶろうた)
- 声 - 中村悠一[49]
- 第二十話「鵺の巻」に登場。胸に大きな傷のある若い青年。怪物が出るという峠を目指していた百鬼丸とどろろの前に現れ、母の敵だという鵺の退治のために2人に同道する。しかし、実は鵺に協力してこれまで山を通る人間を鵺に捧げてきており、鵺が現れた所でそれに挑む百鬼丸に襲いかかり、2人を崖下に突き落とした。かつてはより良い生活のために武士を目指す母親思いの人間であったが、老いた母を担いで山を移動中に鵺に襲われ、自分を掴む母の手を切り落として1人で逃走。その後村の男衆とともに敵討ちに行くも彼らも返り討ちに遭い、その時に男達が見せた恐怖の表情を見て自身の弱さを正当化、以後他人の恐怖と絶望を引き出すことだけを生き甲斐に鵺に人間を襲わせ続けていた。再度挑んできた百鬼丸に鵺が追い詰められると身を挺して鵺を守り、直後に鵺に食われて一体化した。鵺の恐怖に屈さない百鬼丸を羨むと同時に死の間際にはそんな百鬼丸を人ではないと見なした。原作にも登場するキャラクターで、こちらでは妖馬ミドロ号と繋がりのある槍使いだったのに対し、同作品では鵺と繋がっている普通の青年となっており、その顛末も異なっている。
同作品では、百鬼丸の身体を奪った妖怪は、48の魔物から12柱の鬼神に変更されている。さらに菩薩像が身代わりとなったため、実際に身体を奪えた鬼神は11柱である。原作や1969年版と同じく鬼神自体には姿形はなく、百鬼丸から奪った部位を依り代に、物体や生物に憑依し変化することで現出する。作中で分かる範囲では契約を忠実に実行しており、醍醐領は繁栄の一途を辿っていたが、鬼神が百鬼丸に倒され始めるとともに、醍醐領の恵みに翳りが見え始めている。それ以外では気ままに人を襲って食らう、約定で人を利用あるいは守護するなど、行動に他の妖怪との差異は見られず、彼らが倒された時に起きる百鬼丸の身体の一部が戻る、鬼神堂の鬼神像に大きなひび割れが入る等の現象でしか、鬼神か単なる妖怪かの区別は付かない。
- 泥鬼
- 第一話「醍醐の巻」に登場。奪った部位は表皮。原作では、名無しの死霊が操るゴミの化け物。川を流れて移動しながら、ゴミか泥のような体表を触手のように伸ばして手近な人間を捕食する。倒すと、地獄堂の鬼神像の一体が損壊し、醍醐領に大規模な地滑りが発生した。
- 万代(ばんだい)
- 声 - 小山茉美
- 第二話「万代の巻」に登場。奪った部位は痛覚神経。同作品では、村人も万代とグルであり、万代が食い殺した旅人から金品を奪うという共犯関係にあった。
- 長い舌の妖怪
- 第三話「寿海の巻」に登場する、同作品のオリジナルキャラクター。奪った部位は右足。大きく開く口と長い舌を持つ異形の魔物。旅立つ前の百鬼丸を襲った無数の魔物たちの一体で、この妖怪を倒したことで百鬼丸に右足が戻ったのを見た寿海は、義理の息子を旅立たせることを決めた。作中の時系列では、百鬼丸が最初に倒した鬼神にあたる。
- 似蛭(にひる)
- 第四話「妖刀の巻」に登場する。奪った部位は両耳と聴覚。田之介の主君が保持していた錆びた太刀に、鬼神が取り憑いて妖刀と化したもの。劇中では終始雨が降っているが、似蛭が倒されて以降、醍醐領では日照りが続くことになる。
- 蟻地獄(ありじごく)
- 第五・六話「守小唄の巻」に登場する、同作品のオリジナルキャラクター。奪った部位は声帯。巨大なアリジゴクで、水源地付近の山小屋の前に巣を張り、獲物を待ち構えている。琵琶丸と2人で挑んだ初戦の結果、百鬼丸に声帯が戻るが、既に取り戻していた右足を捕食されてしまう。義足代わりの木の棒に廃寺の子供が見つけた銘刀を仕込む作戦で再戦し完全に撃破、百鬼丸に再び右足が戻る。なお、この鬼神が倒される直前に恵みの雨が降りかけていたが、倒されると同時に止み、再び日照りが続くことになる。
- 残され雲(のこされぐも)
- 第八話「さるの巻」に登場する、同作品のオリジナルキャラクター。奪った部位は鼻と嗅覚。胴体の両端部にそれぞれ頭を備えた、双頭の巨大な百足。黒い雲を纏って飛行する。村一つを自らの雲で覆って灰の雨を降らせ、若い娘を「嫁」として生贄に捧げると去っていく。日光に弱く、周囲の黒雲を散らされると悶え苦しむ。また、降り注ぐ灰は脱皮した皮である。周囲を取り巻く黒雲も全て体の一部で、視覚がなく敵意で敵を感知していた百鬼丸には周囲すべてが真っ赤に染まって見えてしまう。初戦では、それまで頼ってきた感覚が使えず狼狽した百鬼丸を翻弄してお梅を丸呑みするも、再戦では、聴覚を取り入れた戦法を見出した百鬼丸とどろろの連携で、本体の位置を特定され撃破された。
- 九尾(きゅうび)
- 第十一・十二話「ばんもんの巻」に登場。奪った部位は作中では言及されていない。原作同様、醍醐領と朝倉領の国境に築かれた壁「ばんもん」に潜む妖狐。無数の狐火に分裂しているが、集まって九尾の狐の姿に変化する。「ばんもん」にあやかしが巣食うことで戦の抑止力となっていたが、百鬼丸とどろろに「ばんもん」から追い払われ、それによって醍醐と朝倉の戦が再燃してしまう。戦が始まると百鬼丸と戦いながら「ばんもん」に舞い戻り、朝倉方の大将を喰らって戦を納めるが、百鬼丸に追い詰められ「ばんもん」に吸い込まれるように一体化、程なく「ばんもん」もろとも崩壊した。
- マイマイオンバ
- 声 - 濱口綾乃[50]
- 第十四話「鯖目の巻」と第十五話「地獄変の巻」に登場。奪った部位は背骨。蝶か蛾のような妖怪で、鯖目の前では人間の姿に変化する。幼虫はネバ糸を出す芋虫の妖怪。鯖目の屋敷内で幼虫に百鬼丸とどろろを襲わせたが、百鬼丸から返り討ちにされそうになりマイマイオンバが助け出した。翌日、湖で百鬼丸により刀で斬り付けられると共に、火を着けられて倒される。
- 二郎丸(じろうまる)、三郎丸(さぶろうまる)
- 第十六話「しらぬいの巻」と第十八話「無常岬の巻」に登場。奪った部位は左足。しらぬいに飼い慣らされている2匹の巨大なサメ。原作同様、魚類とは思えない高い知性を持っており、しらぬいとの絆は深く、命令には忠実に従う。しらぬいの腕を食べてから人間の味を覚え、村人を食い尽くすまでになる。三郎丸は原作と同じくどろろとイタチたちの策により殺され、その死骸はしらぬいをおびき寄せる罠に利用される。二郎丸も見た目は普通のサメであったが、第十六話の終盤で目の色が黒く変色して妖怪としての本性を現し、第十八話の序盤で三郎丸の死骸を捕食して全身が白く変色、鰭も陸上での歩行が可能な形態になるなど、鬼神らしい姿へと変化した。その後、どろろを襲おうとしたが、駆け付けた百鬼丸によって斬られる。
- 鵺(ぬえ)
- 第二十話「鵺の巻」に登場。第二十一話で倒された際に、十三体目の鬼神の両腕が発光したことから、奪った部位は両腕と推測される。頭が狒々、体が虎、後脚が鷲、尻尾が蛇の怪物。とある山の峠に住み着き、山を通る人間を襲っていた。ある時、三郎太とその母を襲って三郎太の母を惨殺、その時の恐怖に屈して精神を病んだ三郎太と協力関係を結び、それ以降は彼が誘き寄せてきた人間を食らってきた。百鬼丸との最初の戦いでは三郎太の支援もあって百鬼丸を退けたが、次の戦いでは圧倒され全身を斬りつけられた挙げ句に顔の半分を損傷するまで追い詰められた。直後に自分を庇った三郎太を食らうことで再生を果たすと失った顔の半分には肉塊状の三郎太の体が浮かび上がり、さらに背中からは白い鳥の翼を生やして百鬼丸に再度襲いかかったが、どろろが駆けつけた時には既に勝負は付いており、取り込んでいた三郎太もろとも絶命した。しかし、持っていた部位は九尾と同様に十二体目の鬼神に奪われたため百鬼丸の体は戻らずその死骸は苛立った百鬼丸に散々痛めつけられた。
- 十二体目の鬼神[注 12]
- 声 - 宮園拓夢[注 13]
- 第十二話「ばんもんの巻・下」より登場。他の鬼神と同様、醍醐との契約により召喚されるが、縫の方が持つ菩薩像の加護により出生時の百鬼丸から身体の一部を奪えなかったため、鬼神堂の最も奥に鎮座する三面の鬼神像に封じられている。鬼神堂を訪れた琵琶丸は「一体だけはなんとか封じられている」と見ている。その後訪れた多宝丸たちを、黒い風を起こして鬼神堂から締め出した。第二十二話「縫の巻」にて、九尾や鵺が奪っていた百鬼丸の体の一部を持っていることが判明し、それらの部位を多宝丸や陸奥、兵庫の3人にそれぞれ失った部位を補うように与える。第二十四話「どろろと百鬼丸」では、目を取り返したことで全て取り返すことに成功した百鬼丸の前に現れるも、返り討ちに遭い消滅する。
- 蟷螂骸骨武者の妖怪
- 同作品のオリジナルキャラクター。第一話「醍醐の巻」に登場する妖怪。醍醐の居城付近の川辺に打ち捨てられた落ち武者の白骨死体に宿った魔物で、カマキリと鎧を着た骸骨が合わさったような外観。出生直後の百鬼丸が醍醐の命で産婆により川に流されそうになった時に出現。産婆を捕食し、百鬼丸も襲うが、通りかかった琵琶法師に切り捨てられる。
- 金小僧(かねこぞう)
- 声 - 北沢力
- 第二話「万代の巻」に登場する妖怪。同作品では、村人に騙され、万代に食われたお遍路の亡霊が変化した六部殺し。村人たちが退治して欲しかった妖怪とは、万代ではなく彼の方だったのだが、他者への害意がないため、敵意を感知して戦う百鬼丸は終始無反応だった。
- 鎌鼬(かまいたち)
- 第三話「寿海の巻」に登場する、同作品のオリジナルキャラクター。幼少時の百鬼丸を襲った魔物の一体。単なる妖怪だが、エンドカードには同話に登場する鬼神ではなく鎌鼬が採用されている。
- 妖鳥(ようちょう)
- 第五話「守小唄の巻・上」に登場する、同作品のオリジナルキャラクター。鳥と翼竜が合わさったような怪鳥。そのスピードと轟音で、聴覚を取り戻した直後で慣れない音に苦戦する百鬼丸を翻弄したが、通りかかった琵琶丸に仕込み刀にて斬り伏せられた。
- 絡新婦(じょろうぐも) / おはぎ
- 声 - 甲斐田裕子[37]
- 第七話「絡新婦の巻」に登場する、同作品のオリジナルキャラクター。十二の鬼神とは異なり、百鬼丸の存在に固執しない。外観は、上半身が人間に似た巨大な蜘蛛。人間の女性に変化し、男性から精気を吸い取る。会話できる程度の知性と理性を持つ。人間を貴重な餌と考えており、吸う精気の量は相手が死なない程度に留めている。森でどろろと百鬼丸に見つかり深手を負い、かろうじて人間に擬態していたところを弥二郎に救われる。萩の花の下で倒れていたため、仮に「おはぎ」と呼ばれる。弥二郎にほだされ、精気を吸うこともできずやつれてきたため、逃がし屋である弥二郎の案内で村を脱出することにするが、百鬼丸と逃がし屋狩りの武者たちに見つかってしまう。戦闘の末、弥二郎の言葉によって敵意が消え失せ、百鬼丸の目にも敵と認識できなくなったため見逃される。
- 蟹化物
- 同作品のオリジナルキャラクター。第十話「多宝丸の巻」に登場する妖怪。数メートルほどの巨大な蟹で、背中の甲羅に人のような顔と大きな口がある。湖の中に潜んで巨大な渦を使って漁師の船を引き込んで、甲羅の口の部分で飲み込んでいた。多宝丸の策により水を抜かれた湖で仕留められそうになるが水門を破壊し形勢を逆転。兵庫を食おうとしたところを、多宝丸と、助っ人に入った百鬼丸に斬られる。
- 白面不動(はくめんふどう)
- 第十三話「白面不動の巻」に登場。同作品では、とある滝の裏で未完成のまま放置された巨大な不動明王像に、あやかしが取り憑いて成った怪異として扱われている。身体が石仏であるため、剣を握る右手以外は動かすことができず、他には口から黒い風を起こすくらいしか攻撃手段がない。自分を彫った仏師を蘇らせ、力を貸し与えることで顔を狩っていた。無心で次々と顔を欲した原作と異なり、顔を狩ったり外敵を排除するために機械的に右手を動かしたりする以外は、意思があるような反応は全く見せない。また、どんな顔を狩ってもまともに像には反映されず、キュビズムのように崩れた顔にしかならない。百鬼丸の刀を顔面に突き立てられ、更に百鬼丸を狙ったはずの剣を躱されて自分の顔面にめり込ませてしまい、顔が完全に破壊されたことで妖気が消失した。
- 小僧妖怪(こぞうようかい)
- 声 - 大谷育江
- 第十四話「鯖目の巻」と第十五話「地獄変の巻」に登場。頭を丸めた姿をした尼の幽霊に連れられた図体の大きな子供の妖怪。胎児にも似た姿をしており赤ん坊のように「まんま、まんま」と繰り返し、どろろに甘えてくる。正体は鯖目の村人たちによってマイマイオンバの幼虫への生贄にされた寺の孤児たちの霊の集合体で、優しくしてくれたどろろをマイマイオンバの幼虫から救う。
- 屍木(あやかしき)
- 第十七話「問答の巻」に登場する、同作品のオリジナルキャラクター。鬼灯のような実がなっている巨木の魔物で、実の中から狛犬のような妖怪が出てきて人を襲う[注 14]。百鬼丸によって幹の中央を斬られると妖気共々実が消えた。
- 天邪鬼(あまのじゃく)
- 第十九話「天邪鬼の巻」に登場する、同作品のオリジナルキャラクター。術を使う妖怪で、天邪鬼の術にかかった人間は本心とは反対のことを言ってしまう。元々村の神社で毘沙門天の足元に封じられていたが、いつの間にか出てきており、村人たちに術をかけていた。宗綱に気絶させられ、再び封じられた。
- ミドロ号
- 声 - 石黒史剛[51]
- 第二十一話「逆流(ぎゃくる)の巻」と第二十二話「縫の巻」さらに第二十三話「鬼神の巻」に登場。醍醐の外れの村で飼われていたが、朝倉との戦支度のために子馬から引き離され戦に駆り出された。百鬼丸を討つため爆弾により百鬼丸と共に爆殺されるが、生き返って燃え盛る炎のような毛並みを持った妖怪の馬になった。第二十二話では、自分と同様に醍醐に強い憎しみを抱く百鬼丸に協力し、彼を背に乗せ醍醐の兵を殺戮して回る。その後、第二十三話で陸奥や兵庫と闘っている最中に子馬が駆け付け、子馬に気が逸れた隙を突かれ相討ちの形で最期を迎える。原作では木曽路、1969年版では景行が飼っていた、幾多の戦乱をくぐり抜けてきた牝の名馬だった。
- オープニングテーマ
-
- 「火炎(FIRE)」(第一話 - 第十二話)[18]
- 作詞・作曲 - 薔薇園アヴ / 編曲 - 女王蜂、塚田耕司 / 歌 - 女王蜂
- 「Dororo」(第十三話 - 第二十四話)[52]
- 作詞 - 後藤正文 / 作曲 - 山田貴洋、後藤正文 / 歌 - ASIAN KUNG-FU GENERATION
- エンディングテーマ
-
- 「さよならごっこ」(第一話 - 第十二話)[53]
- 作詞・作曲 - 秋田ひろむ / 編曲 - 出羽良彰、amazarashi / 歌 - amazarashi
- 「闇夜」(第十三話 - 第二十四話)[52]
- 作詞・作曲・歌 - Eve / 編曲 - Numa
- 劇中使用曲「赤い花白い花」(第五話、第六話)
-
- 作詞・作曲 - 中林三恵 / 歌 - ミオ(CV:水樹奈々)
話数 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 総作画監督 |
第一話 | 醍醐の巻
| 小林靖子 | 古橋一浩 | | 岩瀧智 |
第二話 | 万代の巻
| 初見浩一 | |
第三話 | 寿海の巻
| 吉村清子 | 吉村文宏 | |
第四話 | 妖刀の巻
| 金田一明 | 桑原智 | 鈴木卓夫 | |
第五話 | 守小唄の巻・上
| 小林靖子 | 松尾衛 | 大峰輝之 | |
第六話 | 守小唄の巻・下
| 寺岡巌 | 初見浩一 | |
第七話 | 絡新婦の巻
| 村越繁 | 古橋一浩 | 吉村文宏 | |
第八話 | さるの巻
| 金田一明 | 黒川智之 | 大峰輝之 | |
第九話 | 無残帳の巻
| 村越繁 | 又野弘道 | |
第十話 | 多宝丸の巻
| 金田一明 | 新留俊哉 | 西畑佑紀 | - 柳瀬譲二
- 小美野雅彦
- 加藤雅之
- 若月愛子
- 山田裕子
- 首藤武夫
|
第十一話 | ばんもんの巻・上
| 吉村清子 | 吉村文宏 | |
第十二話 | ばんもんの巻・下
| 小林靖子 | 澤井幸次 | 川奈加奈 | |
第十三話 | 白面不動の巻
| 村越繁 | 吉村文宏 | | 千葉繁 | |
第十四話 | 鯖目の巻
| 吉村清子 | 二村秀樹 | 清水久敏 | - 森田実
- 古瀬登
- 松下純子
- Kweon Hyeok-jeong
| |
第十五話 | 地獄変の巻
| コバヤシオサム | | 岩瀧智 |
第十六話 | しらぬいの巻
| 金田一明 | 石田貴史 | | |
第十七話 | 問答の巻
| 小林靖子 | 吉村文宏 | - 森田実
- 松下純子
- 興村忠美
- Shim Min-Hyeon
| |
第十八話 | 無常岬の巻
| 吉村清子 | 大峰輝之 | | 岩瀧智 |
第十九話 | 天邪鬼の巻
| 村越繁 | | 清水久敏 | | 岡真里子 |
第二十話 | 鵺の巻
| 金田一明 | 佐藤成 | | 岩瀧智 |
第二十一話 | 逆流の巻
| 村越繁 | 新井宣圭 | |
第二十二話 | 縫の巻
| 吉村清子 | 吉村文宏 | 大峰輝之 | | |
第二十三話 | 鬼神の巻
| 小林靖子 | 小林寛 | 徳土大介 | - 小沼由莉香
- 木村友紀
- 小見山和也
- 山田裕子
- 柳瀬譲二
- 加藤雅之
- 冨永拓生
- 細田沙織
- 若月愛子
- 安田祥子
- 安彦英二
|
第二十四話 | どろろと百鬼丸
| 古橋一浩 | - 加藤雅之
- 若月愛子
- 富永拓生
- 山田裕子
- 関みなみ
- 糸山礼央
- 村長由紀
- 木村友紀
- 大峰輝之
- 秋田学
| 岩瀧智 |
インターネットでは、Amazonプライム・ビデオにて2019年1月7日0:00より日本・海外独占配信中[54]。
巻 |
発売日[56] |
収録話 |
規格品番
|
上 |
2019年5月22日 |
第1話 - 第12話 |
VPXY-71721
|
下 |
2019年8月21日 |
第13話 - 第24話 |
VPXY-71722
|
- ^ 『世界名作劇場』の範囲については様々な見解が存在するが、本番組の後番組である『ムーミン(1969年版)』を起点とするのが、2019年現在における最広義の見解となる(詳細は世界名作劇場の項目も参照)。
- ^ 2019年版「放送局」の放送開始の30分後に放送。
- ^ 改題前の『一揆』版はOP中、『コミカル』版は冒頭にクレジット。改題後も引き続き冒頭クレジットされたが、途中より水面に映された『カルピスまんが劇場』のクレジットが反転してタイトルになるように変更された。
- ^ 作詞・鈴木良武、作曲・冨田勲、唄・葵公彦。
- ^ 『からくりサーカス』『ヴィンランド・サガ』『pet』『バビロン』と共に、制作を担当する企画会社「ツインエンジン」が手掛ける5作品のうちの1つとして発表された[19]。
- ^ 1人だけどろろに止められ殺していない。
- ^ 成長する描写は、2004年に発売されたPlayStation 2用ゲームソフト及び柴咲コウがどろろを演じた実写映画『どろろ』を除きこれまでなかった。
- ^ 陸奥の性別は初登場以降、作中で明言されて来なかったが、第二十二話で兵庫から「姉上」と呼ばれていた。また、同話のエンドカードにて姉弟の姓が「安江」であることが判明した。
- ^ なお、2人とも絶命する直前、鬼神の力で立ち上がり、ミドロ号に止めを刺した。
- ^ なお、百鬼丸の第六感では百鬼丸自身も緑色に見える。ただし、琵琶丸の第六感では百鬼丸は醍醐の家の者と同様に鬼神の赤色が混ざった色に見える。
- ^ 原作と異なり、売春をしていることが明示されている。
- ^ 第二十三話で琵琶丸が縫の方とどろろに対し言った呼称で、助数詞は「柱」ではない。
- ^ クレジットとしては単に「鬼神」とだけ表記。
- ^ 寿海は2度接近されているが、1度目は生気を失っており生者として認識されなかったため襲われず、2度目は生気を取り戻したためようやく足に噛み付かれた程度だった。
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- 共:共同制作
- 1:第19話から制作
- 2:第6話のみ
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1:第2作以降は総監督 |