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ねこシス | |||
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ジャンル | ホームコメディ、伝奇 | ||
小説 | |||
著者 | 伏見つかさ | ||
イラスト | かんざきひろ | ||
出版社 | アスキー・メディアワークス | ||
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掲載誌 | 電撃文庫MAGAZINE | ||
レーベル | 電撃文庫 | ||
発売日 | 2009年10月10日 | ||
連載期間 | Vol.5(2009年1月号) - Vol.8(2009年7月号) | ||
巻数 | 全1巻(完結) | ||
話数 | 全4話 | ||
テンプレート - ノート | |||
プロジェクト | ライトノベル | ||
ポータル | 文学 |
『ねこシス』(neko sis)は、伏見つかさによる日本のライトノベル。イラストはかんざきひろが担当している。『電撃文庫MAGAZINE』(アスキー・メディアワークス)にて、2009年1月号から2009年7月号にかけて連載され、電撃文庫より2009年10月に単行本が刊行された。
妖怪が人知れず実在しているという設定の現代日本を舞台に、人間に化けるための術を会得して人間の少女としての生活を始めたばかりの三女を軸として、人間社会と交わって暮らす猫又(猫の姿をした妖怪)の4人姉妹の日常を三人称小説の体裁で描く。
猫又の一族にあって例外的に人間社会との関わりを捨てずにいる東雲一家[1]、その三女である東雲美緒は、人間に対して否定的な同族たちの反対を押し切る形で[2][3]、何年間も習得に失敗していた「人化の術」をようやく会得する[4]。それは実質的には猫としての生き方を捨てて人間として生まれ変わるという術でもあり、東雲一家の家長として彼女に術を授けた東雲かぐらからは、美緒が7日間だけ人間としての生活を体験した後、もし辛い思いをして人間社会に失望するようなことがあれば、彼女のためにも人化の術を解き、人間としての記憶を消去して猫としての生活に戻るようにと言われている[5]。
人間界のアニメやゲームに傾倒する次女の東雲千夜子、人間のことが大好きな四女の東雲鈴といった姉妹に囲まれて、当初は歩くことや食べることにすら四苦八苦しつつ、全てが目新しい人間としての生活を送り始めた美緒は[6]、猫でも人間でもない自分の立ち位置に悩む千夜子の恋愛観との軋轢や[7]、鈴の人間観を決定づけた彼女の親友である西園ひかりとの出会い[8]、そして猫を虐待する人間の飼い主との対決といった出来事を経験していく[9]。美緒は7日間に渡る人間としての生活を通して、これまで享受してきた猫としての自由な生き方とは異なる、人間社会の複雑なしがらみやものの考え方を体験していき、そこから得た結論をもとに、その後の身の振り方を選択することになる[10][11]。
本作の主要登場人物たちである猫又の4人姉妹で、4人全員が人化の術を会得している。人間の町に住む猫又としては最後の一家で[1]、東雲一族の始祖であるかぐらを「長女」とし、その子孫代々がかぐらと共に人里で暮らしてきた[12]。現在はかぐらと、同じ母から生まれた3人が[12]、武家屋敷風の住居を構えて[13]人間3人猫1匹の家族を装って人間の暮らしを送っている[14]。
千夜子と鈴は同じ中学校に通っており[15][16]、後に美緒も人間社会を経験するため「体験入学」として鈴の学級に編入する[17]。千夜子のみ妹たちとは学校の制服の色やデザインが異なっているが[18]、これは鈴が入学した年度から制服が変更されたためである[17]。
東雲家以外の猫又は人間との交流を断っており、東雲家から程近い場所にある「御山」と呼ばれる霊峰に隠れ里を造って住んでいる[12][61]。隠れ里に住む猫又は100歳以上の者が多数を占めている[3]。作中における猫又の設定については「#用語・設定」を参照。
猫又と猫は意思疎通が可能であり[64][65]、美緒は彼らを人間たちと同等の、猫又の同胞として認識している[66]。野良猫たちは猫又を貴族のような存在として敬っているが[27]、外の世界との交流がない飼い猫の場合はその限りではない[67]。
猫又から見た人間たちは、猫とは異なる五感で世界を捉え[76]、ときには制御できないこともある複雑な感情を抱えており[77]、他人や自分に嘘をつくこともあり[78]、複雑な掟やしがらみに縛られている存在である[79]。人間の住む世界には悪い人間や怖い存在もあり、隠れ里に住む猫又たちにとっては恐怖の対象となっているが[80]、猫や猫又と変わらない善き人間もいる[79]。
作中の設定では、東雲一家のような猫又は、かぐらのような「猫魈」を始祖とする妖怪の一種であり[1][62]、猫に似た別種の生き物であると定義されている[1]。猫又は始祖を除けば生まれたときから猫又として母親から生まれ、また人間の伝承に伝わっている猫又とは異なり、尾が二又に分かれているわけではなく人を食い殺すこともないと説明されている[1]。作中には猫又以外の妖怪は登場しないが、死んだ猫が化けて出る化け猫は猫又とは別種の存在であるという言及がある[1]。
彼ら猫又は年齢を経るほど高い身体能力を持ち[39]、20歳からは老化せず、作中では剣と魔法のファンタジーの設定に例えれば、人間に対するエルフのような存在であるとも解説されている[4]。また様々な妖術を行使することもでき、10歳になった年の春から10年に1回ずつ[注 4]新しい妖術を習得する機会を得る[4]。ただし習得は術との相性が悪いと失敗することもあり、その場合は次の年になるまで再挑戦することができない[4]。相性の良し悪しは努力で克服できるものではなく[4]、持ち前の妖力が弱すぎても強すぎても失敗することがあり[21]、人化の術の習得を5回目の挑戦でようやく成功させた美緒のような例は稀であるとされる[4]。
猫又たちが使用する妖術の一つである人化の術は、猫の姿で生まれてくる猫又が猫としての暮らしと引き換えに人間の姿を得るための術であり[5]、術を習得することによって10歳の人間の姿に転生する[4]。人間となっても猫舌であるなど、猫としての特徴や本能の一部は残るが[91]、五感は猫の時とは全く感じ方が変わってしまい[76]、また必然的に人間としての精神的・社会的な葛藤にも向き合わねばならなくなる[77]。人化の術を会得した後も一時的に猫の姿へと変身することが可能だが、人化の術を会得して何百年にもなるかぐらのような大妖怪でなければ、猫の姿を長時間維持することは非常に困難であるとされ[14]、また服は変身時に脱げてしまうため人間に戻る際には素裸になってしまうという難点もある[16]。逆に完全な人間の姿を保ち続けることはあまり難しくなく[14]、人化の術を極めれば人間の姿を保ったまま獣の俊敏さを発揮することも可能になるが[92]、最も安定するのは人間の姿に猫耳と猫しっぽを出した半人半獣の状態であるとされる[14]。
猫又たちは山の隠れ里で暮らしており、東雲一家以外の猫又は人間との交流を断っているが、かつては人間と猫又が共存していた時代もあったとされる[12]。東雲一家が住む町には人間と猫又が交流を持っていた頃の名残があり、猫又を祭神とする神社や「鎮猫祭」と呼ばれる祭事、戦時中に猫又が空襲(日本本土空襲)から町を護ったという伝説などが残されている[93]。一般的には猫又の存在は人間たちの間で忘れられており[12]、猫又の側も自分たちの存在を公にすることを避けているものの[94]、東雲家のような存在の仲介によって、人間の行政機関との最低限の繋がりは維持されている[12][60]。
本作の主要登場人物である東雲千夜子と、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の主要登場人物である黒猫(五更瑠璃)は、外見や設定に同一人物とも受け取れる共通点を持ち[注 2]、舞台背景に繋がりがあるのか否かがファンの間で話題になった[95][51]。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の黒猫は、しばしば自分をフィクションの伝奇物語の登場人物と同一視するかような言動を発し、周囲にはアニメの台詞を真似た痛々しい妄言として受け取られているが[96]、本作の千夜子は本物の「異形の力っぽいもの」[41]を行使することが可能な、正真正銘の妖怪であるため、両者が同一人物であるか否かによって、超常現象のない普通の日常が舞台となっている[97]はずの『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の描写の意味は大きく変わってしまう。作者の伏見つかさは、こうした共通点はあくまで『ねこシス』の企画が一時没になった際に、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』に設定が流用された結果であるとしているが[95]、一方の作品しか読んでいない人も、両方の作品を読んで繋がりを想像している人も公平に楽しめるよう配慮した結果、しばらくの間は両者が同一人物とも別人であるとも解釈できるような形の描写が行われた[51]。また、作者は本作の単行本あとがきで読者に対し、スター・システム的な面白さを感じて貰えたのであれば幸いである、という趣旨のコメントを発している[95]。
ただしその後『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の展開やテレビアニメ化に際して、物語上で黒猫の家族について踏み込む必要が生じたため[98]、結果として原作者自ら脚本を手掛けた『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のアニメ版第9話では、本作の東雲家とは異なった形の黒猫の家庭の様子が描かれた[注 5]。なお『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のアニメ版第2話では、同作のヒロインである桐乃が使っているパソコンのデスクトップの背景として、『ねこシス』単行本表紙のイラストが用いられている描写が登場している[100]。
作品紹介では「ネコ耳ホームコメディ」と銘打たれており[101][102]、作者の伏見つかさは、猫の視点から見た人間の世界を描くことを作品のテーマとして掲げつつも[20]、「ほんわか優しいお話」を意図して書いていると述べている[95]。
本作は、当初は2008年夏の発表を予定して2007年の秋から冬にかけて執筆が進められ[95]、既に最終話の原稿が完成していたものの[103]、一度企画が諸事情により没になり[95]、その後『電撃文庫MAGAZINE』2009年1月号(2008年12月発売[97])より全4話[103][104]の雑誌連載として復活したという経緯を持つ。なお連載が告知された際の仮題は平仮名表記の『ねこしす(仮)』[97][105]。本作は、本作と同じ作者・同じイラストレーター・同じ文庫レーベルにより先んじて発表されたライトノベル『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のプロトタイプ的作品と位置付けられており[95][103]、双方の作品には類似したシチュエーションやほぼ同じ設定の人物が登場するが[95]、これは本作が一度没になり、それに替わって『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の企画が立ち上がった際に、設定や展開の一部が流用されたためであるとされる[20][95]。両作品でイラストを描いているかんざきひろの人選も、元々はかんざきひろが魅力的な猫耳少女のイラストを得意としていることから、本作のために起用されたのであるという[95]。
当初の構想では、猫の視点で人間の世界を見てきた主人公が最後に人間に対する審判を下すといった意味合いの、やや重い結末を予定していたというが、連載開始に当たっては作中の重い部分を除去し、優しく穏やかな雰囲気を前面に出すよう内容を改めたという[20]。物語はエピローグとプロローグに挟まれた全4話の物語として完結しており[103][104]、単行本が発売された2009年10月時点における原作者のブログによれば、発表の機会がなかった短編の構想はあるものの、続編の予定はないとしている[106]。
このほか日本国以外では、台湾国際角川書店より繁体字中文版が「貓娘姊妹」のタイトルで出版されている[107]。