むずむず脚症候群 | |
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むずむず脚症候群患者の睡眠パターン(赤)と正常な睡眠パターン(青) | |
概要 | |
診療科 | 神経学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | G25.8 |
ICD-9-CM | 333.94 |
OMIM | 102300 608831 |
DiseasesDB | 29476 |
eMedicine | neuro/509 |
Patient UK | むずむず脚症候群 |
MeSH | D012148 |
むずむず脚症候群(むずむずあししょうこうぐん、英: restless legs syndrome、RLS)は、身体末端の不快感や痛みによって特徴づけられた慢性的な病態である。レストレスレッグス症候群(レストレスレッグスしょうこうぐん)、下肢静止不能症候群(かしせいしふのうしょうこうぐん)ともいう。現在は周期性四肢運動障害(PLMD)と表裏一体の関係にあるとされている。
むずむず脚症候群は、ヨーロッパでは17世紀からこれに相当する病気の報告がある。日本では世界で最初に睡眠学会が創設され、周期性四肢運動障害との関係や不眠症との関係が積極的に議論されてきた。日本睡眠学会は世界の睡眠学会で最大の会員数を誇ることもあって、日本の医師の間ではとても有名であったが、欧米、とくに米国ではほとんど無視されてきた。しかし1960年に米国のエクボン博士が、エクボン症候群(英: Ekbom syndrome)と命名し、米国でも認知されるようになった。現在でも米国ではむずむず脚症候群では通じず、エクボン症候群とよばれている。現在では欧米でも日本並みに広く知られる神経疾患となった。患者が脚を動かさずにはいられない状況から、「下肢静止不能症候群」とも呼ばれる。この項では、以下RLSと記載する。
自覚症状として、じっとした姿勢や横になったりしていると主に下肢の部分に(患者によっては、脚のみならず腰から背中やまた腕や手など全身にまで現れる)「むずむずする」・「じっとしていられない」・「痒い」だけでなく、「ピンでなぞられているような」・「針で刺すような」・「火照るような」・「蟻やミミズなどの虫が這っているような」などの異様な感覚が現われ時には「振動」のような感覚まで感じたりする場合もある。また「激しい痛み」を感じるなどさまざま。この苦しさは「脚の中に手を突っ込んでかき回したいぐらい苦しい」と表現する患者もいて、この症状の辛さを表している。
このむずむずとした不快感や痛みなどの不快な異常感覚・身体症状が下肢や腰・背中・腕などに出現するため、患者はこれを抑えるため常に脚を動かしたり身体をさすらなければならない状況に追い立てられる。
3分の1の患者では週に2回以上、中等症から重症の症状が起こる。特に夕方から夜間にかけて症状が増強するという特徴(勿論、日中でも症状は出現する)がある患者が多く、入眠障害・熟睡障害や中途覚醒のような睡眠障害の要因となり、また日常の座ったままやじっとした姿勢の活動を阻害されるため放置していると日常生活に大きな影響を及ぼす。この結果、副次的症状として昼間の疲労感を引き起こす。
実際、患者は昼夜にわたり生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす様々な症状に苛まれている。回復が長引けば全身の「慢性疼痛」の症状がでてくる。
症状が悪化すると睡眠障害と過度のストレスから「うつ病」を招いてしまうため、睡眠障害を専門とする精神科医や神経内科医、睡眠外来などの受診が推奨される[1]。
正確な原因はまだ解明されておらず、
などが考えられている。脳内での鉄分の欠乏や、ドーパミンの合成異常がかかわっているという仮説が有力である。つまり、人間の神経で情報の受け渡しを行うドーパミンという神経伝達物質は鉄分が不足すると分泌量が減り、情報を正しく伝えることができなくなってしまいすべて脳への情報が誤って伝えられる為、身体の感覚に異常を感じるとされている。 周期性四肢運動障害とRLSは密接な関係があることが昔から議論されており、現在は同じ原因、同じ疾患カテゴリーに属すると考えられている[2]。
どのような場合に発症するのかも未だ明確にはなっていないが、発症しやすいケースは複数存在する。なお、精神的ストレスは病状の強弱と関連がある。
『睡眠障害国際分類第2版』(ICSD)に従えば、むずむず脚症候群の診断基準Eでは、他の現行の病気や、薬物使用などで説明できないということを満たしている必要がある[7]。ドーパミン受容体を遮断する抗精神病薬による、薬物または物質による睡眠関連運動障害は、遅発性ジスキネジアやアカシジア(静座不能)が原因となる[7]。
国際レストレスレッグス症候群研究グループ(IRLSSG)診断基準2014改訂版[8]では5つの必須診断基準として
と、診断を補助する4つの特徴として
を挙げている。
Restless legs症候群と鑑別を要する疾患(RLS mimics)[9]として
などが挙げられる。
RLSの異常感覚は、薬物治療で軽快する場合が多い。とりわけドーパミン神経の機能を高める薬である「L-DOPA製剤」や「ドーパミン受容体刺激薬」がRLSによい効果があることは、これまでの研究や臨床経験から知られている。
米国では、ドパミン受容体作動薬(プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン)とCaチャネルα2δリガンド(ガバペンチン エナカルビル)がむずむず足症候群を適応症として米食品医薬品局の承認を受けている。欧米では中等度以上の症例には、パーキンソン病の治療にも使われるドーパミン受容体作動薬を第一に使う。
日本で処方する際は、ドパミン作動薬での治療を基本とし、効果が不十分な場合は、GABA誘導体への切り換えもしくはドパミン作動薬への追加投与を考慮する[10]。
保険適用外で有効な薬剤として、クロナゼパム(リボトリール錠)、ガバペンチン(ガバペン錠)がある[10]。
抗痙攣薬(クロナゼパム・バルプロ酸など)も効果が見られる。RLSを疑わせる症状があり、さらに血中フェリチン濃度が50ng/mL以下の時には、鉄剤の処方により症状が改善することが多い。
この疾患に睡眠薬(サイレース)や抗うつ薬を処方されると、むずむず感が解消されないまま眠気だけがどんどん増し、却ってRLSの症状を悪化させる可能性がある。
日本の医師の間では非常に有名な疾患であった。海外では米国のエクボン症候群の名前が用いられるが、そもそもこの疾患は日本睡眠学会を中心に周期性四肢運動障害及び前駆症状として、日本の大阪大学の杉田義郎教授らが中心となって研究を続けてきた症候群だからである。日本睡眠学会の会員が多いことも医師の間でこの疾患が有名な一因であろう。ただし、「むずむず脚病」はややマスコミ用語で、もともとは周期性四肢運動障害前駆症状群もしくはレストレス・レッグス症候群と呼ばれていた疾患である。
しかし、マスコミが報道しないと一般の人の間ではRLSがあまり知られない。ひどい不眠に長年苦しんでいる患者がいても適切な治療を受けていないケースがほとんどであるといわれている。20年前の時点で睡眠時無呼吸症候群を知っている人はほとんどいなかった。現在RLSが置かれている状況はまさに20年前の睡眠時無呼吸症候群と同じ状況である。
RLSは入眠障害や中途覚醒といった睡眠障害の要因となっており、これがきっかけで患者が受診し診断と治療を受けるのが一般的である。RLSは入眠障害の要因となっているだけでなく患者は昼夜にわたり生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす様々な症状を起こす可能性がある。
睡眠障害を主訴とする患者がまず受診するのは内科、精神科、心療内科などである。
名称から症状自体は脚だけに発生すると思われがちだが、病気の本体は下肢ではなく中枢神経系にあると考えられている。従って、人によっては下肢だけではなく腰から背中や腕や手など全身にまでむずむずした不快な症状を感じる人も少なくない。全身に症状がある患者の場合、脚だけの症状ではないのでRLSではないと判断するのはむずかしい。
この病気は人工透析患者、妊婦、若い女性にも多い。RLSのために夜眠れないと 交感神経が刺激されるリスクがある。交感神経が刺激されると基礎代謝が上昇しやせる。