コンピュータX線撮影(コンピュータエックスせんさつえい、英: Computed radiography, CR)とは、広義にはコンピュータでの画像処理を前提としたX線撮影法を指し、狭義にはX線フィルムの代わりにイメージングプレート(IP)を用いたX線撮影法を指す。
近年、大面積の半導体検出器を用いたフラットパネルディテクター(Flat Panel Detector、FPD)が広義のComputed radiographyとして普及しつつあるが、これはデジタルX線撮影・デジタルラジオグラフィー(Digital Radiography、DR)と呼び[1][2]、これに対してIPを用いる従来型のComputed radiographyをCRと表記することが多い[3][4]。
これまでのX線撮影では、X線画像の記録、表示、保存を全てフィルムで行っていた。これはフィルム代や現像薬品代などの費用(ランニングコスト)がかかり、フィルムを保管しておく場所も必要で、以前に撮影した画像を探すのも大変であった。
CR方式では、X線画像をイメージングプレートに記録し、特殊なスキャナで取り込んで画像処理し、デジタル画像として表示・保存をする。イメージングプレートは光輝尽性発光現象を利用したもので、X線での撮影後にレーザー光を当てると再度発光するのでそれをスキャナで読み取ってデジタル化する[5]。撮影したデジタル画像は、モニタで直接読影できるのは勿論のこと、ドライイメージャという装置でフィルムに出力して、一般的にレントゲン写真と呼ばれている形態とし、シャウカステンを用いて読影することもできる。 またイメージングプレートは消去処理を行うことで再利用できる。
またDR方式では、X線で光または電子を発生させる層とそれを検出する層をセットにし、X線撮影と同時にデジタルデータへ変換しコンピュータに取り込む。これによって、X線撮影後わずか数秒で画像を表示[6]することができるようになった。X線反応層には、硫酸ガドリニウムやヨウ化セシウムなどのシンチレータ(蛍光体)で光を発生させるもの[7][8]や、アモルファスセレンで電子を発生させるもの[9][10]がある。検出器にはTFT液晶の技術から発展した大面積の半導体検出器[5](フラットパネルディテクター)や、複数の電荷結合素子(CCDイメージセンサ)を用いる方法[11]がある。それぞれに感度、解像度、処理速度等に一長一短がある。
このようにしてデジタル化したX線画像は、医療用画像管理システムで管理され、フィルムでの保管に比べて検索などの利便性が向上する。 日本の健康保険診療では通常のレントゲン撮影に比べ「ディジタル加算」という追加算定が発生する。
医療以外の分野では非破壊検査の一環として放射線透過検査や化石等の地質学調査や美術品の真贋調査や科学捜査や考古学上の遺物の調査等にも使用される。
コンピュータの性能が向上しつつあった1970年代から開発が行われ、当初は工業用に電子写真を用いた方法が開発された。しかし、電子写真を使用する方法では検出器の感度が低く、被曝量が従来のX線写真よりも増えるので、医療分野への適用は当時は見送られた。1980年のハント兄弟による銀買占めにより銀の木曜日が発生、銀相場高騰(シルバーショック)が起きたことより、各社のX線写真用フィルムは原価割れになった[12]。このような状況を打開するために、非銀塩式X線撮影装置の開発が各社で進められた。