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| タトラT4 タトラB4 | |
|---|---|
|
T4D(ライプツィヒ、1993年撮影) | |
| 基本情報 | |
| 製造所 | タトラ国営会社スミーホフ工場(ČKDタトラ) |
| 製造年 | 1968年 - 1987年 |
| 製造数 |
合計 3,509両 T4D 1,766両 B4D 789両 T4SU 431両 T4R 321両 T4YU 117両 B4YU 85両 |
| 主要諸元 | |
| 編成 | 1 - 3両編成 |
| 軌間 | 1,000 mm、1,435 mm、1,450 mm、1,458 mm、1,524 mm |
| 電気方式 |
直流600 V (架空電車線方式) |
| 最高速度 | 65.0 km/h |
| 起動加速度 | 1.8 m/s2 |
| 減速度(常用) | 1.8 m/s2 |
| 減速度(非常) | 2.3 m/s2 |
| 車両定員 |
T4 97人(着席20人) T4D 114人(着席26人) B4 100人(着席28人) |
| 車両重量 |
T4 16.2 t B4 13.5 t |
| 全長 | 15,104 mm |
| 車体長 | 14,000 mm |
| 全幅 | 2,200 mm |
| 車体高 | 3,050 mm |
| 車輪径 | 700 mm |
| 固定軸距 | 1,900 mm |
| 台車中心間距離 | 6,400 mm |
| 動力伝達方式 | 直角カルダン駆動方式 |
| 主電動機 | T4 TE-022 |
| 主電動機出力 | T4 40 kw |
| 歯車比 | T4 7.43 |
| 出力 | T4 160 kw |
| 制御方式 | T4 抵抗制御 |
| 制動装置 | 発電ブレーキ、ドラムブレーキ、電磁吸着ブレーキ |
| 備考 | 主要数値は[1][2][3][4][5]に基づく。 |
タトラT4は、かつてチェコスロバキア(現:チェコ)のプラハに存在したタトラ国営会社スミーホフ工場(→ČKDタトラ)が製造した路面電車車両(タトラカー)。付随車のB4と共に、東ドイツを始めとする東側諸国各地の路面電車に導入された[1][2][3][6]。
1960年から製造が実施されたタトラT3は、経済相互援助会議(コメコン)体制下の元でタトラ国営会社スミーホフ工場(→ČKDタトラ)が手掛ける標準型路面電車車両(タトラカー)として東側諸国各都市への導入が行われた。それまで自国で製造された路面電車車両の導入が継続して行われていた東ドイツについてもカーンマルクスシュタット(現:ケムニッツ)やシュヴェリーンにT3および付随車のB3が導入されたが、T3・B3の車体幅(2,500 mm)は東ドイツの多くの都市の車両限界と比べて広く、停留所のプラットホームに車体が接触する恐れがあった。それ以外にもソビエト連邦やルーマニアなど各地に同じ条件を抱える路面電車路線が多数存在し、T3やB3とは異なる規格を持つ車両の開発が要求された。それに応える形でスミーホフ工場が生産したのがT4とB4である[1][7]。
終端にループ線が存在する路線での運用を前提とした車両で、主電動機や菱形パンタグラフを搭載した電動車のT4、主電動機や運転台が設置されていない付随車のB4共に進行方向右側に乗降扉が3箇所設置され、T4の運転台も片側にのみ存在する。前面や後方の外板にグラスファイバーを用いる、プラスチック製の座席を導入するなど軽量化を図った車体や、パノラミックウィンドウを用いたT4の先頭部デザイン、タトラカーの技術の由来となったPCCカーと同様の多段式間接自動制御、直角カルダン駆動方式など基本的な構造はT3やB3と同様だが、以下の点で差異が存在する[6][2]。
T4・B4は1968年から1987年まで製造が行われ、総生産数は合計3,509両に達した。前述の通り、東ドイツに加えてソビエト連邦、ルーマニア、ユーゴスラビアなど東側諸国各地へ向けて導入されたが、付随車のB4は東ドイツとユーゴスラビア向けのみ供給された。導入先の国によって、以下の形式が存在する[1][7][10]。




| T4・B4 導入都市一覧[1][15][16][11][17] | |||
|---|---|---|---|
| 形式 | 導入国 | 都市 | 導入車両数 |
| T4(試作車) | チェコスロバキア (現:チェコ) |
プラハ (プラハ市電) |
1両 |
| T4D | 東ドイツ (現:ドイツ) |
ライプツィヒ (ライプツィヒ市電) |
597両 |
| ドレスデン (ドレスデン市電) 「タトラT4 (ドレスデン市電)」も参照 |
572両 | ||
| ハレ (ハレ市電) |
323両 | ||
| マクデブルク (マクデブルク市電) 「タトラT4 (マクデブルク市電)」も参照 |
274両 | ||
| B4D | 東ドイツ (現:ドイツ) |
ライプツィヒ (ライプツィヒ市電) |
273両 |
| ドレスデン (ドレスデン市電) 「タトラT4 (ドレスデン市電)」も参照 |
250両 | ||
| マクデブルク (マクデブルク市電) 「タトラT4 (マクデブルク市電)」も参照 |
142両 | ||
| ハレ (ハレ市電) |
124両 | ||
| T4SU | ソビエト連邦 (現:ロシア連邦) |
カリーニングラード (カリーニングラード市電) |
223両 |
| ソビエト連邦 (現:ウクライナ) |
リヴィウ (リヴィウ市電) |
73両 | |
| ソビエト連邦 (現:エストニア) |
タリン (タリン市電) |
60両 | |
| ソビエト連邦 (現:ウクライナ) |
ヴィーンヌィツャ (ヴィーンヌィツャ市電) |
42両 | |
| ソビエト連邦 (現:ウクライナ) |
ジトーミル (ジトーミル市電) |
18両 | |
| ソビエト連邦 (現:ラトビア) |
リエパーヤ (リエパーヤ市電) |
15両 | |
| T4R | ルーマニア | ブカレスト (ブカレスト市電) |
131両 |
| アラド (アラド市電) |
100両 | ||
| ヤシ (ヤシ市電) |
70両 | ||
| ブライラ (ブライラ市電) |
10両 | ||
| ガラツィ (ガラツィ市電) |
10両 | ||
| T4YU | ユーゴスラビア (現:セルビア) |
ベオグラード | 22両 |
| ユーゴスラビア (現:クロアチア) |
ザグレブ (ザグレブ市電) |
95両 | |
| B4YU | ユーゴスラビア (現:クロアチア) |
ザグレブ (ザグレブ市電) |
85両 |
1980年代、東ドイツの各都市で運用されていたT4D・B4Dの一部車両について、ループ線が存在しない系統への導入に向けて運転台や乗降扉の増設など折り返し運転(両方向形)に対応した改造工事が実施されている[注釈 1]。また、1990年代以降はドイツを含めた各国で車体・座席・機器の改修、集電装置の変更に加え、電気機器の電機子チョッパ制御方式への交換などの近代化工事や、T4の台車や一部機器を流用した電車の製造が行われている。以下、双方を含めたT4・B4の改造や機器流用車の事例を解説する[1][19]。
ドイツ再統一やソビエト連邦の崩壊などの社会の変革を経た1990年代以降、超低床電車の導入に伴い各都市でT4・B4の廃車が進行しており、近代化工事を実施した車両についても2000年代以降多くの都市で廃車対象となっている。旧東ドイツ各都市ではマクデブルク市電では2012年、ハレ市電では2020年をもって営業運転を終了した他、ドレスデン市電についても前述の通り2010年をもって定期運用から撤退し、残存する車両も2023年までに全車廃車される予定となっている。また旧ソビエト連邦各都市でも老朽化の影響からタリン市電やリエパーヤ市電のように全廃される事例が相次いでいる。一方、これらのT4・B4の一部車両は朝鮮民主主義人民共和国の平壌(平壌市電)、ブルガリアのソフィア(ソフィア市電)、ルーマニアのアラド(アラド市電)など各都市の路面電車への譲渡が積極的に行われている[1][25][42][43][44][45][46][47][48]。